2018/11/17:旅行後

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旅先で恋人がイヤホンを落としてしまって、馬鹿だなぁなんて思っていたら自分も買ったばかりのイヤホンを落としてしまって馬鹿だ。帰りのバスの中、100均の腐った水面に腐った桃を叩きつけるみたいな音質のイヤホンで音楽を聴きながら、これを書いている。おれの最高の休暇が終わる。

恋人は明日から友人たちと遊びに行くとのことで、逆方向の電車に乗ってどっかに行った。楽しんでこいよ。無事に帰ってこいよ、方向音痴。

 

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ホテルまでの道を確認しようと、ホテル名でググってみると「〇〇ホテル 幽霊」「〇〇ホテル 事件」とか物騒な予測変換が出てきた。恋人はそういうのがめちゃくちゃ苦手なので、普段そういうホテルには絶対に泊まらないようにしているのだけれど、今回は直前に急いで宿を決めたせいで安さだけ見てしまい、そういった噂があるかどうかを確認するのを忘れていた。

なので、恋人がホテル名を検索してしまい、これから泊まる場所がそういったホテルだということを知ってしまうのを避けることに必死になる。恋人が「地図調べてあげようか? なんていうホテルだっけ?」とか親切心で言ってくれているのに「大丈夫、おれの携帯の方が充電多いから任せてくれ」とか言って男らしい感じを演出しつつ、なんとか誤魔化し誤魔化しホテルまで辿り着く。安くて古いホテルだった。べつに幽霊なんて出なかったし、恋人もわりと気に入っていたので良かった。もし恋人にホテルの噂がバレてたら、幽霊じゃなくて恋人に恨まれてただろうなぁと思う。

 

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京都のとある喫茶店に行った。ホールの女の子は綺麗な子で、働き始めたばかりなのか、レジを打ち間違えたり、金額を計算し間違えたりしていた。その店のレジは見るからに古い型のレジで、打つのが難しいんだろうな、と思う。慣れない接客に慣れないレジ打ちに大変だよな、と思う。みんな生活をするために、なんとか頑張って働いて金を稼いでいる。知らない街の知らない店で、知らない女の子がこうやって必死に仕事を覚えている。

女の子が運んできてくれたコーヒーを飲みながら、頑張ろうな僕たち、なんて心の中で話しかけてみる。

相席のおっさんがピースを吸っている。おっさんが読んでいる新聞に水着姿の女の写真がデカデカと印刷されたエロい記事。別の席にはカップル。読書をする青年。数人の女に囲まれた態度のデカいスーツ姿の男。

誰もがそれぞれに生活をしている。

 

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すれ違う人、人、人、たまに犬、猫、人、人、人。

全ての顔が違って、全てに違う生活がある。おれはその誰も知らないし、誰もおれのことを知らない。今ここでおれのことを知ってるのは隣の恋人だけで、恋人のことを知っているのはおれだけだ。

それぞれに過去とか現在とか未来とかが重くのしかかってることを考えて、途方も無く苦しい。

人混みに溶けて、一生こうして二人、匿名の誰かとしていたい。そう思う。誰にも知られなくていい。風景の一部になる。

おれたちのことを放っておいてくれ。

誰も何も邪魔をしないでくれ。

街中でキスをする。

誰もおれたちのことを知らないし、興味も無い。

だから、街中でキスをする。

匿名の二人の生活が、匿名の二人にとって掛け替えのない生活であることなんて誰も想像しないし、興味が無い。

だから、街中でキスをして、二人のどうしようもない日々を繋ぐ。

 

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大阪に行ったときにいつも泊まるラブホテルを当てにして宿もろくに考えずにそこに向かったら、そのラブホは潰れて解体作業中だった。安くてわりと快適だったのに、残念。

適当に調べて適当なラブホに泊まる。

ラブホの風呂は広い。ベッドもデカい。部屋も広い。そして普通のホテルより安い。電マもコンドームも平然と置いてある。ラブホはコスパが良い。

困ったらみんなラブホに泊まればいいと思う。しいて言えば、予約ができないのが不便だけれど。

 

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土日が明ければ、また仕事。生活のために金を稼ぐ。金を稼ぐために、色々な面倒くさいことや嫌なことや考えたくないことに真剣に向き合う日々。

クソみたいな日々。

明日のことは分からないけれど、明日の予定に縛られている。

誰もがクソみたいな日々をクソみたいな気持ちでなんとか生き延びている。

おれは匿名で有れる瞬間を生き甲斐にして、クソの中を泳いでいる。

例えばネットはそういうとこだし、そういうとこが無ければ、生きていくのも困難なクソな世の中。

おれの最高の休暇が終わる。

所属して、役割を担って、縛られて、疲れて帰って酒を飲んで寝るだけの日々に戻る。そうじゃないと生きていけないらしいから、不本意ながら、戻る。

2018/11/12

今日は月曜日。

選挙カーの大音量で起こされた。市議会選。「〇〇をよろしくお願い致します」「〇〇村の皆さん、お騒がせして申し訳ございません」「私、〇〇、〇〇と申します」。同じ言葉の繰り返し。どの車も同じことしか言わないなら選びようも無いだろ、と思いながら布団の中でウダウダする。

ネットを漁っていたら夏帆のパンチラ画像が目に入った。超エロいな。朝からエロが過ぎる。元気が出たので、起き上がって何をしようか考える。洗車をしようと思いつく。そういえば、もう何ヶ月も洗っていなかった。ライトの光に引き寄せられて車体にぶつかり死んでいった虫たちの死骸が無数にこびりついた黒いボディ。泡立てたスポンジで擦る。車体に貼り付いた小さな小さな死骸たちは、なかなか剥がれ落ちてくれなかった。無数の命だったものが汚れとしてホースの水に流されていく様を眺めながら、昼飯のことを考えるのが生きるっていうことだ。

 

昼は、担々麺を食べに行った。人気店で、土日はめちゃくちゃ並ばないと入れないので行く気にならない。平日の昼は、並ぶことは並ぶけれどまぁ並んでもいいかなってレベルの並び方なので、平日休みの今日、満を持して食いに行った。めちゃくちゃ美味かった。

 

午後から彼女が歯医者に行くというので連れて行って車で待つ。

少し前から差し歯の挿入に向けての治療を開始していた彼女の下顎前から右に5番目くらいの歯茎には何やら金属製の突起物が生えていた。サイボーグみたい。初めてそれを見たときに声を出して笑ったら悲しい顔をされた。3度目くらいの治療の後、なにやら「恥ずかしい」と照れていたので理由を聞くと、歯茎に生えた金属製の突起がピカピカに磨かれてしまったのだと言う。見せてもらう。たしかにこれまではただの歯茎から生えた金属製の突起だったものが、歯茎から生えたピカピカの金属製の突起になっていた。声を出して笑ったら悲しい顔をされた。

そして今日、ついにその歯茎から生えたピカピカの金属製の突起の上に、差し歯が被せられるのだった。車で眠りながら彼女を待った。ウトウトしているとドアが開く音。彼女の嬉しそうな顔。歯を見せて、というと「1時間くらいずっと噛み締めてないとダメなんだって」とのことで、口を開けないらしい。彼女のピカピカの差し歯を拝むことは叶わなかった。明日、見せてもらおう。綺麗な歯がついたね、って笑ってやろう。

 

 

 

2018/11/04:昼前

部屋の窓をから顔を出して、煙草を吸う。視界にはカメムシが8匹。向かいのベランダの白シャツに3匹とベランダのフチに2匹と飛んでるのが2匹と窓の内側のレースカーテンに1匹。クソ田舎だから人間は少なくて、カメムシは多い。

煙草の匂いが指と口の中にこびりつく。石鹸でゴシゴシ手を洗っても、歯磨き粉で思いっきり歯を磨いても、なかなか無かったことにはならないうぜえ匂い。煙草を吸ったことが彼女にバレるかもしれないな、というくだらないスリルを抱えて午後から彼女に会いに行く。

 

朝、母親が「お父さんと出かけるから、昼ごはんは適当にあるものを食べて」と部屋のドアを開いた。眠気まなこで、おう、おー、オー、と返事をする。母親が「空き缶捨てときなよ!  今日、資源回収だったし捨てればよかったのに」と部屋のドアを閉めた。おれの部屋には大量の空き缶が袋詰めされていたり、転がっていたりする。そのほとんどがストロングのロング缶だ。

 

11月も始まったばかりだというのに、もう金がない。今月半ばには「連続休暇」なる愛すべき1週間が待っているので、旅行にも行かねばならないのに、もう金がない。金がないけど、昨日はステーキを食いに行った。ステーキは美味かったけど高かったので、もう金がない。あと最近はガソリンもめちゃくちゃ高いので、もう金がない。

 

せっかく何もない日曜日だから何をしようかと悩む。せっかくだから有意義に過ごしたい。時間を無駄にしたくない。何をしようどこに行こう。考えていると2時間くらい経っていた。今は、可愛いサボテンでも買いに行きたいなー、でも、可愛いサボテンってなかなか見つからないんだよなー、とか考えている。

そんで結局何もせずに彼女に会いに行く時間になる。彼女とはもう1ヶ月以上エロいこととかしてないけど、おれは彼女が好きだ。性欲が一緒にいる口実ではないんだということに安心する。同時にけっこう不安にもなる。だからちゃんと平日の会える時には会いに行くし、休みの日には大抵一緒に過ごす。それで良い。

回想

彼の故郷は小さな集落である。水田や畑が民家と同じ数ほど並ぶその集落には、1年中、土の匂いが漂っている。集落の中には1本の川が流れている。彼の家はその川沿いの崖の上に建っていて、彼は常に水が岩にぶつかったり渦を巻いたり忙しく流れ続ける音を聞きながら育った。しかし、彼は川にいつも恐怖を感じていた。底の見えない深緑色がどうしても好きになれなかった。キラキラと日の光を反射する流れを見て人々は綺麗だと口を揃えて言うが、彼には得体の知れない怪物が蠢いているように思えたのだった。


彼の家の玄関を出ると、正面に、川へと下りることのできる石段がある。石段を下りると、大岩と言われている文字通り大きな岩がある。苔が大岩の表面を覆っていて、岩肌から小さな木が何本か生えている。彼は、岩なのに木が生えるのだなぁ、とそれを不思議に思っていた。夏になれば町内の中学生が集まってきて、岩の上から深緑色の水面へ飛び込んで大声で騒いだ。彼の祖母は自分の家の庭を中学生達が勝手に通り抜けていくことをよく怒っていた。大岩の横には小さな水溜りがある。茶色く濁った水溜りの底には木の葉が積もっていて、アブの幼虫やボウフラがプカプカと浮かんでいる。彼はその水溜りが好きだった。何故かというと、水溜りにはこじんまりとした恐竜のようなアカハライモリが何匹も泳いでいたし、4月頃になるとモリアオガエルが卵を産むためにやって来るからである。こんなに汚い水溜りでもそれを頼りに命を繋ぐ生物が沢山いるのだ、と幼いながらに彼は感動したのだった。水溜りの上には大きな樹が枝を広げていて、モリアオガエルがその枝や大岩の岩肌に泡状の卵を産み付ける。産卵から数日経つと、泡はゆっくりと溶けていき、オタマジャクシが水溜りにポトリポトリと落下していく仕組みである。彼は毎日水溜りに通い、オタマジャクシの成長していく様子を眺めるのを好んだ。あ、今日は小さな足が生えてきたな、あ、こいつは前足が生えている、じきに陸に上がってくるぞ、とワクワクしながら眺めていたのだった。
しかし、ある日、台風が来て川が増水し、大岩の半分ほどの高さまで水嵩が増した。茶色く濁った水が慟哭の様な音を響かせることが彼の不安を増幅させた。
台風が去って、水嵩も減り、川が元の姿に戻ると、彼はいつものように石段を下っていった。そこには、今まで見たことのないほどに綺麗な、透き通るような水を湛えた水溜りがあった。 彼は涙を流したのだった。

2018/10/29:酔

人間は猿と変わらない。猿よりも馬鹿な生き物かもしれない。人間はどんな動物よりも賢いと思っているのは人間だけで、そんなことに固執しているのは人間だけで、他の動物は人間の存在なんて風景と同じに思っているのだろう。

 

自意識の中でしか生きられない悲しい生物たちよ。本当にこんな生き方が正しいのかい?

 

要らないことばかりを突き詰めて、要らないことが生の全てを埋め尽くして、僕らは苦しんでいる。食と性とそれ以外に何が必要だって言うんだろう。人間が人間であるためには知性が必要だとか、理性が必要だとか、そんなのはただの幻想で、人間なんてのは本当にその辺の虫と変わらない。社会なんてくだらない枠を絶対だと錯覚してその中でしか生きていけなくなってしまったくだらない生き物が世界を牛耳って鼻高々に平和とか叫ぶけど、本当は果てなんてないのに。

 

人間が何だ。この身体は結局、精子卵子の結合体でしかないだろ。お前も、お前も。偉そうなことばっか言ってるけど、お前は細胞の塊でしかねえよ。

混ざり合って、幸せだと泣き合って、死んでいこうぜ。

 

2018/10/27

夕方、窓辺で煙草をふかしながらぼーっと空を眺めていると一羽のツバメが視界を通り過ぎて行った。こんな時期にまだツバメがいるなんて、と不思議に思う。他のツバメと一緒に渡りそびれたのかもしれない。もしそうならば、早くみんなに追いつけるようにと願う。この集落は、もうこんなにも寒い。

 

夕日が雲を橙に染める。青かった空の色は、夜の闇に飲み込まれる前の短い時間だけ薄い水色に変わる。青が薄れて、そしてまた深い青へ変化して、最後には黒く塗りつぶされる。

橙の雲の割れ目に薄水色の空が覗いていて、そこに小さな光が見えた。一番星。

夜空に無数に輝く星の中の幾つかは、暗くなる前に輝き始めるのだ。

そういえば、星が輝き始める瞬間を見たことがない。夜空を見上げると無限とも思えるほどの数の星が輝くが、それらが輝き始める瞬間を一度として目にしたことがない。見たことのある人は、果たしてどこかにいるのだろうか。

 

昼間に近所の畑での野焼きをしていた。煙の匂いがまだ空気中に残っている。秋の匂いだ。煙たい空気に煙草の煙を吐き出す。

 

ひとり、美しさに打ちひしがれる夜。酒を飲んで、ふわりとした頭で、考えているふりをして何も考えずにいる。

 

自分に無いものを持っている人がどうしようもなく羨ましくて妬ましい。美しいと思うものはいつも、自分の中にはなくて、美しいのはいつも他人だ。

 

全てにおいて、他人より劣っている気がして怖い。僕は何も持っていない。ただ身体があって、陳腐な脳味噌があって、それで何だって言うのだろう。

 

劣等感で生かされている。何か、何か、何でも良い、何かひとつだけでも、何かがあれば良いのにな。満たされることのない人生を、満たされるために生きる。

 

アルコールに溶けた脳で、美しさに殺されるだけの人生。それはとても苦しくて、でも、とても幸せだ。

 

 

深夜の悲しい報せ。大好きな存在がまたひとり旅立ってしまった。

書き残しておく。

ありがとう。さようなら。僕は君に出会えて本当に嬉しかったよ。またいつか、遊ぼうね。

雑記

人は皆、自意識の中に生きている。眼に映るものは全て自意識によってしか認識されない。つまり、人間はそれぞれがそれぞれの世界を見ていて、その世界を創り出しているのは紛れもなく自分自身である。人間は自分の中に生きている。だから、逃れられるはずがない。自分が世界なのだから。生きるということは、世界に身を置くことだ。生きている限りは、世界の中を彷徨うしかない。世界からの離脱は、自己の喪失を意味する。

 

僕と君は同じ部屋で暮らしていても、同じ世界には暮らしていない。同じものを食べていても違うものを食べているし、同じ景色を見ていても違う景色を見ている。

 

それがとても寂しい。

 

青について

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物置小屋の横の石垣で、トカゲが日光浴をしていた。若いトカゲの尻尾は青く輝いている。捕まえてみようか、と思ったが、尻尾を千切らせてしまうのが勿体なく感じて、やめておく。

 

青年というが、成る程、人間も若い頃は青いのだ。ケツの青いガキ、という言葉もある。尻尾がないので、ケツが青くなるしかないのだろう。そんなことを考える。トカゲは身の危険を感じた際に、尻尾を切り離し、身代わりにして、逃げる。では、人間が自身の青を切り離すのはどんな時で、何処へ逃げて行くのだろうか。

 

近付いて指を目の前でチロチロと動かしてみると、トカゲは、石垣の隙間にするりと滑り込んでいった。