2020/2/11:退屈な祝日

ひとり、どんよりとした気分で終えるこの一日が、自分の今後の人生にとって善にも悪にも働かない、きっと、数ヶ月もすれば記憶の端にも登らない、思い出そうとしても思い出せない類の一日になってしまうのだという予感が、布団に潜ることを躊躇わせる。

 

ふと思い出すのは、喜怒哀楽の付随した「あの日」ばかりで、人間の脳味噌というものは、感情で上塗りした時間しか記憶に残せないのではないか、と思う。例えば、フードコートで食べたもの、買い物に行った時に着ていた服の色、公園で捕まえたトノサマバッタは何匹だったか等、平凡な日常のあれこれを思い出すことは困難だ。あの子の髪の匂い、祖父が死んでいく病室での啜り泣く声、幼馴染と作った首の無い雪の怪獣。鮮明に思い出せるのは、色々な感情の渦の中を流され泳いでいた瞬間、そういう記憶ばかりだ。

特別な日が毎日続けば良い、というわけではない。不特定だからこその特別なのだから。毎日が特別になってしまうと「今日は特別、特別な日ではなかったなぁ」という事態にもなりかねない。特別の中にも段階が構築されてしまうだろう。つまり、特別が特別ではなくなってしまう。人間は欲望の塊なので、特別が毎日続くと特別を特別と思わなくなって、特別よりも特別な特別を希求し始めるに決まっている。そんなのは、虚しい。

特別じゃない日も、自分を構成する一部になっていくのだろうか。それとも、ただ単に通り過ぎる一点でしかないのだろうか。でも、こういう一日があるからこそ、特別な日を特別に感じることができるのだと考えると、少しだけ、安心することができる。

 

間違ったことも間違っていないことも全部を抱えた状態が今の自分である。そして、この先に増えていく間違いや正解に耐え切れるだけの精神が必要なのだろう。死ぬまで更新される幸福や絶望を内包できる容れ物で居なければならない。自分の人生の大きさは、自分で量るしかないのだから、量り方を間違えないように。

 

記憶は過去だ。でも、さっき言ったように、思い出せることは「特別な」ある日のことばかりだ。これまでの人生、特別じゃなかった日の方が多いのではないか。自分の人生において、その全体像を正確に把握できている人間なんて、きっと存在しないだろう。平凡なある日。思い出すことのないある日。その積み重ねの中に、幸せだったり悲しみだったり、様々な感情が色を付けていって、そして人はそれを人生と呼ぶ。

 

生きていくということは、絵を描くようなもので、物語を綴るようなもので、色を付けて、脚色を加えて、あぁこれは素晴らしい、面白い、と思えるように足掻く作業と、それを俯瞰してここはこうした方が良いとか、なんでこうなってしまったんだ、でもここは感動したぞ、と、観る作業が並列的に連続している状態であるといえる。人間は複雑だ。

 

布団に潜り込む。目を閉じて、意識を飛ばせば、次に目を開く時には朝になっている。そうしてダラダラと日々は続く。いつまでも続くようで、いつかは終わると言う。特別が特別なままで、いつまでも続けば良いのにな、と思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

2020/2/3:雑文

令和2年の2月。もう年が明けてから1ヶ月経った。この1ヶ月、何もしていない。何もしていないのに1ヶ月が経っていて超怖い。とか言ってるうちにまた1年終わるんだろうな。

 

2年も経てば、仕事にも慣れて余裕が出てきて仕事終わりに友達とかとご飯食べて遅くまで話し込んで次の日も仕事だけどそんなことどうでもよくてあと10分が20分になって遅くなっちゃったなーとか言って帰って寝て早起きして出社、みたいなこともできるようになるんだろうなーとか思ってたけど、まったくそんなことはなく、仕事終わりは、疲れ切って一目散に帰宅して酒飲みたいという欲望しか見出せない。

 

何かを成し遂げた実感も充実感もなく、合わせ鏡みたいな日々が続いていって、気付けば弛んだ枝みたいな見た目になっている。そんな未来が、わりとすぐそこに存在することを悟って、震えてしまう。

 

選択を誤り続けて(正しい選択なんてのは幻想なんだけど、自分の実感としての話)、後悔が積もるだけの人生を、如何に喜劇に見せかけるか(自分に)がこれから生きていく上での命題だと思っている。

 

そういう意味で、人々は日々には変化が必要だと言うわけです、たぶん。変化のない惰性の日々は、喜劇でないのはもちろん、悲劇ですらない。人間は自分の生きる日々を物語だと思い込みたがる。なので、必死に理想の物語を思い描いて、理想に近づくための選択肢なんてものがあると錯覚して、勝手に良い選択だった悪い選択だったと自己判断しては喜んだり悲しんだりしている。本来、人生なんてのは虚無で何もない。何もないからこそ、真っ白いキャンバスよろしく何かを描こうとする。

 

つまり、人々の生きる本質は物語とも言える。人は自分を物語として完成させることを目的に、人を愛すし、産むし、殺すし、死んでいく。

 

そんなことを考えていると、物語って人が生み出したものではなくて、物語が人を生み出したのかなぁ、とも思う。

 

ここからの人生、どうなっていくのか、わりとどうでもいいけど、欲を言えば、誰かの物語に組み込まれて死んでいきたいというエゴに殺されたい。

 

 

憂き世話

 

「こんばんは、起きてる?」

 僕たちの会話は、毎回、その言葉から始まる。それは電話だったり、SNSのメッセージ機能だったり、玄関先で面と向かってだったり、状況は違えど、いつだってそうだった。アシちゃんの家だったり、駅前だったり、適当な場所で落ち合って、ふたりで酒を飲む。アシちゃんは、僕に会った時点で必ず酔っ払っていた。

「アルコールはね、正義なんだよ。人間の本質はいつだって隠されていて、その本質ってのは、まあ、隠されてるくらいだから善か悪かって言ったら大抵は悪の方で、アルコールはそれを暴いてくれるんだよ」

 アシちゃんは言った。ちなみに今だから言えるけれど、アシちゃんがいつも夜になると酔っ払っているのは、二十歳になる前からのことだった。

 ふたりで飲みに行って、次の店を探して飲み屋街を歩いている時、路上で、どう見ても既婚者であろう左手の薬指に指輪をつけた中年男と、どう見ても大学生であろう耳たぶに猫の形のダサいピアスを付けた金髪の若い女が抱き合って深めのキスをしていたことがあって、横を通り過ぎながら「本質、出ちゃってるねぇ」なんてアシちゃんが言うから、僕は声を出して笑ってしまった。ぎょっとした顔でこちらを振り向いた男と女の唇はヨダレの糸で結ばれていて、汚くて、下品だった。糸はすぐに重力に負けて、一滴の雫になって、吐瀉物や煙草の吸い殻まみれの地面へ吸い込まれるように垂れ落ちていった。少し歩いてから、その話をアシちゃんにすると「あれは、あいつらにとっての運命の赤い糸みたいなもんだね」なんて言うから、僕はまた声を出して笑った。「どっちかに口内炎ができてて、ヨダレに血が混ざってたら、完璧だねぇ」と、アシちゃんがほくそ笑む。僕は「汚ねえ赤い糸だな」と笑いながら側溝に唾を吐いた。

 居酒屋を三軒ハシゴした後、アシちゃんの部屋へ向かう。アシちゃんは駅から徒歩十三分の安いアパートで一人暮らしをしている。僕は実家に暮らしている。僕の家とアシちゃんの実家との間には歩いて数分の距離しかない。僕の家からアシちゃんのアパートまでも、歩いて十数分ほどの距離しかない。それなのに、アシちゃんがわざわざ一人暮らしをしているのは、親と仲が悪いから、ではなくて、ただ単に一人暮らしがしてみたかったから、という理由かららしい。アシちゃんは大学に行っていない。高校を出てから、建築会社の事務職に就職したが、数ヶ月で退職した。今はフリーターで、バイトをして家賃と生活費を稼いでいる。一方、大学生の僕は、実家暮らしなので食費はかからないし、学費も親に払ってもらっていて、週に三日ほどのシフトを組んで駅前の居酒屋で稼いでいるバイト代は自分の遊びのために使う、という甘ったれた生活をしている。

     アシちゃんと飲みに出ると、数回に一回は、アシちゃんの部屋で飲み直す。帰り道のコンビニで、ビールとストロングゼロを二本ずつと、ちょっとしたスナック菓子をカゴに入れていると、アシちゃんが何かを持って歩いてくる。

イカそうめん、臭くて美味い。最近ハマってんだよね」

「嗜好がおっさんみたいだな」

「うるさいな、汚いおっさんも綺麗なお姉さんも、表皮を剥がしたら人型の肉の塊でしかないのよ」

    イカそうめんの袋がカゴに投げ入れられて、かさり、と乾いた音を鳴らす。

 レジでジャージ姿の中年男性が煙草を買っている後ろ姿を眺めながら、財布から千円札を取り出していると、横からアシちゃんが五百円玉を渡してくる。それを受け取って会計を済ませている間に、アシちゃんは外に出て、先程までレジにいたジャージ姿の中年男性と並んで煙草をふかしている。店員の「ありがとうございました」を後ろに聞きながら自動ドアを抜けて、お釣りをアシちゃんへ渡す。

 アシちゃんも僕も、酒を飲むと眠くなるタイプで、ふたりで酒を飲んでは、どちらかが眠り、起きている方が眠ってしまった方を起こして、しばらくしてまたどちらかが眠り、笑いながら起こして、そうしていつのまにかふたりとも眠ってしまうのだった。

 セックスをするのは、飲んで帰った夜ではなくて、次の日の朝、もしくは昼頃に目が覚めてからが多かった。アシちゃんが「セックスは起き抜けにする方が気持ちいい」と主張するからそうなったのだけれど、それに関しては僕も同意見だ。起き抜けのセックスは、思考回路が覚醒しないまま、性欲だけが色濃く、肌の感触や体温、まだ歯を磨いてない口内のざらざらした不快感、ぬるい体液が混ざり合う音、全てが生々しく感じられて、たまらなく気持ちが良い。

 

 僕たちは付き合っていたわけではない。でも、友達というには近すぎる関係だった。僕がアシちゃんのことを「アシちゃん」と呼ぶのは、彼女と出会った頃に、彼女の名字である「足立」をどう読むのか分からなくて、かろうじて「足」という漢字を「アシ」と読むことができたからだ。幼馴染の場合、普通だったら下の名前で呼ぶことが多いのだろうけれど、僕はアシちゃんのことをなぜだか名字で呼んでいる。幼少期の僕は、漢字を読めるのが格好良いと思っていたのかもしれない。そして、アシちゃんの名前の中で唯一読めた「足」という字で、彼女を呼ぶようになったのだろう。とにかく僕たちは、幼馴染だからずっと一緒に遊んでいた。一緒に虫を捕まえたり、雪だるまを作ったり、漫画を貸し借りしたりしていたその延長が、酒になり、セックスになっただけのことなのだと思う。

    アシちゃんの話を、大学の友人にすると、

「それってセフレじゃん」

と言われるが、なんだかしっくりこない。そうやってカテゴライズされるようなくだらない関係なんかじゃなくて、僕とアシちゃんは「僕とアシちゃん」でしかない。カテゴライズされるようなくだらない関係なんかより、もっとくだらない関係だから、カテゴライズすらできないのかもしれない。他人から見ればセフレに見えても、僕とアシちゃんとはセフレではない。恋人同士でもない。強いて言えば、幼馴染。正しくは、僕とアシちゃん。関係に名前を付けるなんてのはただのエゴでしかないと思う。いつも通る道で、いつも見ている街並のはずなのに、ある日突然、理由もなく、どうしようもなく美しく感じてしまう瞬間があるような、そういう言葉では説明できない感覚があるように、どうにも説明できない関係があることはおかしなことではないだろう。

    アシちゃんが「今日はバイト休みなんだぁ」と、冷蔵庫から缶チューハイを取り出して、プルタブを引く。下着も付けずにオーバーサイズのTシャツを着て、朝から酒を煽るアシちゃん。僕は、ベッドの上で足元に脱ぎ捨ててあった下着を履きながら、缶を傾けるアシちゃんを眺めている。

「あ、そうだ」

アシちゃんが、机の上に置いてあったレジ袋の中から何やら取り出す。

「これ、フエラムネ、ふと見かけてさ、懐かしくて買っちゃったんだよね」

    幼い頃、両親は毎週三百円の「おやつ代」をくれた。おやつ代を貰うと、ふたりで一週間分のお菓子を買いに近所のスーパーマーケットに向かった。ひもQ、蒲焼きさん太郎、チョコボール、ココアシガレット、色々な種類のお菓子が並ぶ棚の前でふたりは目を輝かせる。アシちゃんも毎週百円持ってきてくれたので、ふたり合わせて四百円以内に収まるように、あれこれ悩みながら選ぶのが楽しかった。フエラムネは毎回買った。付属のおもちゃをアシちゃんが欲しがるので、自分がどうしても欲しいもの以外はアシちゃんにあげて、その代わり、八個入りのラムネの内の五個を僕が食べていた。

「おもちゃ、開けてみてよ」

アシちゃんが、僕に小さな箱を投げて渡す。小さな箱の中でおもちゃがカラカラ音を立てた。箱を開けると、プラスチック製の鼻が異様に長く尖った謎の動物が入っていた。

「ヤバい動物が入ってたわ」

ベッドから降りて、手のひらに乗せた謎の動物をアシちゃんに見せる。謎の動物を受け取ったアシちゃんは「うわ、なんかキモいね」と笑う。箱を開けて中身を確認して渡す。この作業を幼い頃には毎週行っていた。おもちゃを受け取ったアシちゃんは、それがどんなものであっても、大袈裟なくらいに喜んでくれた。卒業したり、大学生になったり、就職したり、バイトを始めたり、ふたりの状況はそれぞれ少しずつ変化してきた。いつからか昼間ではなくて、夜に会うようになった。朝まで一緒にいるようになった。それでも、目の前で笑うアシちゃんの右頬の笑窪は、幼い頃から何ひとつ変わらない。アシちゃんが、謎の動物を右手の指先で転がして眺めながら、酒臭い息を吹いて、懐かしい音を鳴らす。

 

 

 

憂き世話

  中国地方の小さな地方都市、都市だなんて呼んでしまうのも恥ずかしいくらいのここにある国立大学には、受験に失敗してランクを下げて行き場もなくて仕方なくここを選んだという学生ばかりが多く通う。なんでこの大学を選んだの? と訊くと大抵、苦笑いを浮かべて「聞かなくてもわかるだろうに」という目でこちらを見つめる。

 自分は何故この大学を選んだのか。純粋に、地元の大学であったからだ。やりたいこともないし、わざわざ遠くの大学に行く意味も見出せなかった。高校三年生の頃、クラスメートたちが続々と進路を決めていく中、自分だけが最後まで進路を確定せずにだらだらと受験勉強をこなすだけの日々を送っていた。

 

「やりたいことがなかなか見つからないんですよねえ」

 

 担任との面談の際に言ったことがある。担任の眼鏡が少しだけ左に傾いていたのを覚えている。レンズ越しの目は机の上の資料に向けられたままだった。

 

「やりたいことなんて、大学に入ったら勝手に見つかるから、とりあえず少しでも興味のあることを学べそうなところを探してみなよ。大学にはいろんな人がいて刺激にもなるし、サークルに入ったり、バイトしたり、そういう経験の中でいろんなことを学んで自分の生き方を考えてみるのがいいと思う。今は、難しく考えすぎない方が良い」

 

「そんなもんですかねえ」

 

 担任は自分のことしか考えていないのだろうな、と思った。自分のクラスの進学率を上げたいから、そして少しでも自分の評価を上げたいから、この自分がかけている眼鏡の傾きにも気づかない男は自分の将来ばかりに目を向けていて、ちっとも私の目を見ようともしないのだ。

 

「先生は、どういう基準で大学を選んだの?」

 

 もし、この教師が自分と同じように何の目的も期待もなく大学に進学をしたというのなら話を聞いてやっても良いな、と思い訊ねる。

 

「俺は教師になりたかったから、教員免許を取れる大学を探したんだよ。まあ、どこに行っても大抵の大学は教員免許くらい取れるんだけど。あとは、歴史が好きだったから、そういうことを学べる大学を選んだってのもあるかな。でも、その他のことはあまり考えてなかったなあ。」

 

 なんだ、やっぱりやりたいことがあって大学に入っためでたいタイプの人間じゃないか。尻が痛んできたので、座り直すと椅子が軋んで嫌な音を立てた。

 

「じゃあ、先生は教師になりたいという信念を持って大学生活を過ごして、実際に教師になって、素晴らしい生き方をしてきたんだね。すごいね」

 

「べつに素晴らしくはないだろ」

 

「いや、素晴らしいと思うよ」

 

 生徒に褒められて嬉しいのか担任の口角が少し上がった。つまらない。こんな男でも夢を持ってまっとうに生きてきたのだ。自分は何をしているのだろうか。

 

 大学に入学すると、思っていた通り「大学生マジ最高じゃん」と顔に書いてあるような人間ばかりが教室や廊下、食堂などに蛆のように湧いて蠢いていて、もとから少ししか持ち合わせていなかった希望も粉々に砕け散って蛆に食われていった。

 最初に私に話しかけてきたのは、肩くらいまでの髪の毛を金に近い茶色に染めた好美という女だった。右の耳たぶに大きめの黒子のようにくっついたピアスは開けたばかりなのだろう、穴の周りが赤くなっていて、体液が乾いて黄色く粉を吹いていた。

 

「あなたどこ出身? あたしは岡山から来たんだー。この辺りって店も少ないし遊ぶとこないよね。四年間やっていけるかなあ」

 

「私、ここ地元なんで」

 

 簡潔に答えると、好美は「え、地元なんだ、すごいね」とよく分からないことを言った。何もすごくない。黙っていてほしい。

憂き世話

「そう、あの時から僕の性格はこんなに卑屈でどうしようもない匂いを漂わせ始めたんだと思います。どこか一点が腐り始めてしまった果物、そうだな、蜜柑とか梨とかそういうものを思い浮かべていただければ分かりやすいかもしれません。それまでは綺麗な色や形をしていたはずなのに、気づいたときには腐敗が進行していたらしく、いつのまにか目に見えて腐り始めた一点から腐敗が徐々に全体へと広がっていきますよね。そういった感じで、僕はあの日、腐り始めて、ついには点が点ではなくなって僕を覆い尽くしてしまったんです。」

 

 目の前の二十代前半くらいに見える男は感情の無い目をこちらへ向けた。人間なので感情がないわけはないのだが、感情を読み取ろうと見つめ返しても、そこに映るのは瞳のカーブに沿うように引き伸ばされて歪んだ自分の顔くらいで、男がそこで何を感じて息をしているのか全く分からない。ここに座っている自分の姿が男の瞳に映るままの歪んだ姿をしているような気がしてくる。首元に青黒い蛇が巻き付いていると錯覚しそうなほどに重苦しく淀んだ室内の空気。それを入れ替えるためだろう、男が立ち上がり、からから、と粗末な音を立てながら窓を開いていく。

 

「あの時って、具体的にいつのことなの?」

 

 開かれた窓から流れ込んできた新鮮な空気に背中を押されるように、訊ねてみる。蛇はもうどこかへ隠れてしまったようだ。喋っている一瞬の間に、この口の中にするりと逃げ込んだのではなければ良いな、と思う。

 

「中学校一年生の頃です。」

 

 男が浅蜊を横から見たような薄い唇を割って話し始める。

 

「当時付き合っていた子がいたんです。彼女は携帯電話を持ってたんですけど、僕は親が買ってくれなくて持っていなかったんです。だから連絡を取るのは家の電話でっていうことになっていたんですけど、ほら、中学生くらいの女の子って手紙が好きじゃないですか、彼女も手紙好きだったみたいで、ある日、文通しようって言われたんです。家の電話だと親が鬱陶しいし、まあいいかな、と思って文通を始めたんですね。もちろん切手を貼って、住所を書いて、投函して、なんて面倒なことはしませんでしたよ。そんなことしたら、それこそ親に見られて鬱陶しいですからね。学校で会った時に渡したり渡されたりするんです。クラスが違ったので、廊下ですれ違う時が多かったです。ていうか、あれですね、冷静に考えると学校でたまに手紙交換するくらいの関係なのに付き合ってたっていえるんですかね? まあ中学生でしたから、彼氏彼女っていう響きがただただ嬉しかったんでしょうね。まあでも好き同士ではあったので良しとしましょう。で、文通を始めたんですけど、僕、思ってたよりも手紙書くの嫌いだったんですね。手紙書くのってこんな面倒なことなんだな、って書いてみて初めて気づきました。自分の思っていることとか考えていること、体験したこととか、よく恥ずかしげもなく書けるもんだなって。頑張って書いたんですけど、僕、恥ずかしがり屋なので、手紙を渡すタイミングもなかなか掴めなくて、すれ違ってもちょっと手を振るくらいしかできなかったり、酷いときには彼女に気づかないふりしちゃったりしてました。でも彼女の方はね、自分の書いた手紙をさりげなく僕のポケットにねじ込んでくるんです。ポケットに手を突っ込んでくるから、その子の指先が僕の股間に触れちゃうこともあって、僕が、うっ、て声を出しちゃうと、ああ、ごめんごめんって。結構積極的な子だったんですかね、分かんないですけど。ああいう子とセックスできてたなら、また何か変わってたのかもしれませんね。あ、話が逸れました。そう、それでも何度か僕も頑張って手紙を渡してたんです。だから彼女の方からも手紙の返事がやってくるわけで。返事をもらってないのに、さらに返事を書く奴なんて相当な曲者ですもんね。」

 

 男は窓の外の暗闇に目を向けながら話している。一匹の羽虫が、部屋の明かりに導かれて、外の広い世界から、閉ざされた狭い空間に舞い込んでくる。

 

「頑張って返事書いて渡してたんですけど、ついに渡せなかった手紙がありまして、内容は、たしか、テストの点はどうだったか、とか、好きだよ愛してるよ、みたいな適当な文句とか、そんなもんでした。だから別に特段渡しづらいものでもなかったんですけど、なんとなく渡せなくて、そのままどんどん時間だけが過ぎていって、渡してない手紙に彼女から返事が来るはずもなく、すれ違っても目を合わせるくらいになって、そのうちに付き合ってるってことすら本当かどうか分からなくなってきて、でも学ランのポケットには渡せないままの手紙がいつまでも居座ってるんです。ポケットだけじゃなくて、頭の中にもずっとそれが居座ってた。ああ、もう嫌だ、と思って、ある日の帰り道、手紙を川に投げ捨てたんです。あの時ってのは、その時のことです。腐敗しつつあった梨の表面に、茶色くて指で押したら、ぐしゃり、と潰れてしまいそうな小さな点ができた瞬間でした。」

 

 羽虫は電灯の周りを円を描くようにして飛び回っている。男の背中を水滴が下っていく。下に向かうにつれてその速度は速くなっていき、最後には男の尻の割れ目に吸い込まれていった。部屋の中が暑いのだ。自分の身体も汗で湿っている。白く膨らんだふくらはぎを眺めていると蛙の腹を思い出す。自分の身体なのに気持ちが悪い。

 

「そんなことで、性格が卑屈になるもんなの?」

 

 それまで窓の外ばかりに目を向けていた男が振り向く。下唇を噛み、何かを考えているのか目玉を泳がせた後、こちらに視線を向ける。

 

「なんというか、人間って馬鹿なんですよ、たぶん。他の人にとっては本当に些細な出来事でも、ある人にとっては人生を揺るがすほどの意味を含んでいるものなんです。みんながみんな、同じ価値観で生きているわけじゃないんです。それが分かっていても、他人の価値観なんてガンガン無視して自分の価値観でしか生きられないから人間は馬鹿なんです」

 

「それって、あたしがバカだってことを言いたいの?」

 

 少しだけ棘のある声音で言ってみる。

 

「いや、そういうつもりじゃなかったんですけど」

 

 男は、こちらから目を反らしてまごついている。男の感情を初めて目にしたような気がして、心の中でほくそ笑む。

 

「まあいいや、続けて」

 

 男に最後まで話をさせることにする。特に理由はない。ただ同じ空間、同じ時間にふたりでいるというこの事実がいつまで続くものなのか確かめてみたいのだった。もしかしたら、もう腐敗は始まっているのかもしれない。

 

「ああ、はい、えっと、あなたのことを馬鹿にしてるわけじゃなくて、どちらかと言うと自分を馬鹿にしているというか。そういうところが卑屈なんですよね。だから、えっと、あの時から僕はずっと、あの時のことを引き摺ったままここまで来てしまって、そのせいでいろいろなことを上手くこなせないんです。例えば、文章を書くことを未だに苦手にしているのも手紙のことがあったせいだと考えることができますよね。一種のトラウマというか。あと、女の人と接するのもあまり得意じゃないです。セックスだって数えるほどしかしたことないし、付き合ったことだってそう。そうだ、女の子って僕が思ってるよりも性欲強いんですね。最近分かりましたけど。飲み会とかで隣の席になった子が、この後空いてる? って声掛けてくることが割と多くて。僕から誘うことなんてできないので感心しますね。まあ、誘われても行く甲斐性なんて無いんですけどね。自信ないんです、自分のセックスに。たまに、まあいいか、と思って二人で飲み直して、カラオケ行って、それからホテルに行って、みたいなことも、たまにですけどね、ありますよ。でも、大抵、想像していたよりもつまんなかったな、って結果で終わるんです。自分のセックスもしょーもないし、相手もたいしたことないし。きっと、僕は女性に期待し過ぎてしまっているから、期待を越えることなんて無いんです。期待ばかり膨らんでしまって、現実がついていかないんですよね。あれ? なんでこんな話してるんだろう? あ、違う。違います。あなたとのセックスはとても良かったですよ。ここまで来たのはなんだろう、自分でもよく分かんないんですけど、あなたのこと気になってるのかもしれない。うん、気になってたからついて来たんです。えっと」

 

「あ、もういいよ。君があたしのこと気になってるとか、そういうことが聞きたいわけじゃないから」

 

 じゃあ何が聞きたいのだろうか。正直今までの話なんて全てどうだって良かったのだ。セックスがしたくなったので、たまたま隣にいた男に声を掛けてホテルに来ただけなのだ。今回の男はどうやら外れらしかった。可愛い顔をしていたので遊び慣れているのだろうと思っていたが、どうやらそういうわけでもないらしい。「ただ屁理屈を並べて自分を正当化したいだけの童貞じゃない程度の変な奴」これが今回の男に対する印象だった。セックスも、彼が言う「自信の無さ」が現れたのかあまり良いものではなかった。期待を越えることはなかった。お互いさまかもしれないけれど。セックスが終わって何やら話し始めたと思ったらこの有様だ。

 

「うわあ、虫だ」

 

 突然、男が犬の糞でも踏んだかのような間抜けな声を上げる。さっきの羽虫が男の顔の周りを周回するように飛んでいる。男の顔には恐怖の色がありありと浮かんでいる。自分の内面についてだらだら語らせたのが悪かったのか、男は急に感情をあらわにし始めた。面倒くさい。

 

「寝るね、おやすみ」

 

 そう言って男に背を向ける形で寝転がり布団を被る。シーツがふたりの汗を吸って、湿り気を帯びている。柔らかい水溜りの様で、不気味な感触。

憂き世話

猫が交尾中に出す声は、赤ん坊の泣き声に似ている。猫も夜中に交尾をする。人間と同じ。深夜に窓の外から聴こえてくる声は不気味で、猫が鳴いてるのか、赤ん坊が泣いてるのか、猫が鳴きながら交尾をして、それで、雌猫から赤ん坊が泣きながら生まれたのか、なんて、くだらないことを考えてしまう。

 

安アパートの一室で、午前4時半過ぎの薄暗闇の中、隣で眠る年下の女を眺める。可愛いのか、可愛くないのか、よく分からない顔をしている。

例えば、おれが今からこいつの首を絞めるとする。こいつが眼を覚ます瞬間と、一生眼を覚まさなくなる瞬間と、一体どちらが先に訪れるのか。人が死ぬ瞬間って、おれには理解が及ばない。

いつだったか、SNS若い女性が飛び降り自殺をする瞬間を撮った動画が拡散されていた。おれはそれを見た。ビルの上から、ふわっ、と女性が飛ぶ。飛んだ次の瞬間から、おれには彼女がただの「落下する物体」にしか見えなかった。まるで、人形の様な。そして、数秒後に破裂音。人間は物体でしかないことを思い知った。色々なことを考えて、苦しんで、葛藤して、なんとか生存しているという、いじらしさ。それが無性に虚しくて、愛しい。そういうものが人間だと思っていたけれど、人間は、落下する物体でしかなかった。そのイメージと事実の乖離が、どうしようもなく悲しかった。おれは彼女を知らないけれど、彼女が死ぬ瞬間を知っている。彼女は生きていた。

病室で、祖父が死ぬ瞬間を見た。でも、いつ死んだのか分からなかった。気づいたら祖父は死んでいた。死ぬ直前、祖父は必死に呼吸をしていた。空気を飲み込む様にして、必死に。祖父が寝ているベッドの周りは親族でぎゅうぎゅうに囲まれていた。祖父が空気を嚥下するペースが、数秒に一回から、数十秒に一回になって、そして、止まった。何分待っても、祖父は、次の呼吸を待ちわびる親族の期待に応えることはなかった。主治医が、祖父の瞼を指で押し開いて、瞳にペンライトを当てる。照らされた瞳孔は収縮せず、開いたままだった。祖父が死んだことを、主治医が口にした「ご臨終です」という言葉でしか判断できないのが悔しかった。

 

女の首を絞める。

女が目を開く。驚愕と困惑と恐怖と怒りの入り混じった視線でこちらを見上げる。次の瞬間、おれは、女の首から手を離す。「びっくりした?」なんて、とぼけてみせる。怒りつつも、安心した女が、ふざけておれの首を絞める。おれは、少し息苦しいことに安心する。

 

なぁ、百五十年も経てば、おれもお前も、この世にはいなくなってるんだ。おれとお前だけじゃない、今ここに生きている誰もが、いなくなっているんだ。信じられないけれど。

 

窓の外で猫が鳴いている。どこかで、赤ん坊が泣いている。目の前で、女が笑っている。とりあえず、みんな、生きている。また、生まれていく。

 

 

 

 

 

 

 

2020/01/02

年が明けて1日経った。

 

12月31日の23時前くらいに眠くなったので寝て、起きたら1月1日の午前2時で、ウケた。居間のコタツと夢の中で新年を迎えたマヌケな24歳。

 

1月1日は酒を飲んで寝ていたら終わった。

朝、起きて簡単なおせち料理と日本酒で朝食を済ました後、村の神社に初詣に向かった。毎年、初詣は自分の村の小さな社に参る。すれ違うのは知った顔ばかりで「おめでとうございます」と小さく会釈しながら苔むした石段を昇る。ここには、おみくじなんてものは無いので、僕は正月におみくじを引く文化を持ち合わせていない。大吉でも末吉でも凶でも、自分の運勢なんて、知らなければ関係ない。

 

自治会の新年会があったので、昼前に公民館に向かう。過疎地なので若者は少ない。この村では高校生になったら強制的に自治会に入れられる。新年会では、高校生になったばかりの新参者は日本酒の一升瓶を持っていくことになっている。昔は、それで洗礼を受けていたのだろう。これからよろしくな、飲め飲め、親も今日くらいは許してくれるぜ、なんて。今はビールすらほとんど飲まない若者の集いなので、一升瓶は開封すらされない。しきたりだけが残っている。

 

余った缶ビールを持って帰って、炬燵で飲みながら眠った。起きたらもう17時半で、しょーもない過ごし方してるなぁ、と思う。正月くらいは、まぁ、良いか。

 

年が変わっても、自分が変わるわけではなくて、新年早々、いらないことばかり考えてしまう。今年は何か変われるだろうか、良い方に。去年はあまり良い年ではなかった。けど、良いことばかりが面白いわけではなくて、少しスリルのあることとか背徳感とか、そういうのもわりと楽しい。そういう意味では面白い1年ではあった。でも、正しく生きるべきなんだよな。真っ当な人間であるべきなんだよな。もう、ふらふらしてていい年齢ではないんだから。

 

サントリーハイボール濃いめが、美味しい。

 

 

 

 

廃墟2019

今年は何故だか、廃墟によく足を運んだ。人が造って、人が捨てて、人気のない、自然に迎え入れられつつあるような場所たち。社会不適合感のある僕は、そういうところにふらっと訪れて、ボーッとして心の安寧を保っています。今は誰もいないけど、確かに人間の手によって造られた場所。非日常な場所。でも、かつては日常に組み込まれていた場所。日常と非日常の境目。

 

今年行った中でも印象深い物件たちの画像を載っけていきます。

 

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これはかなり有名なところ。夏頃、四国にひとりでふらっと旅行に行った帰りに、思い立ってふらっと寄ってみた。ふらっと寄ってはみたものの、この物件は山の上に建っていて、

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こういう道をしばらく歩いていかなければならず、けっこう体力を使った。夏で暑かったし、天気も悪かったし。場所的に、ふらっと寄るのはオススメしません。僕はサンダルで行って後悔しました。

 

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ここは本当に素晴らしかった。個人的にナンバーワン。廃ストリップ劇場。

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自分の知らない世界ってけっこう身近に存在しているんだなぁ、と思う。
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ここは、大劇場と小劇場の2つの劇場があった。かなり大規模なストリップ劇場だったようで、大劇場は小学校の体育館くらいの広さがあったような気がする。いや、それは言い過ぎか。でもかなり広かった。

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こんなの、文化遺産でしょう。放置されてるのが勿体ない。ちなみにサンダルで行って後悔しました。

 

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廃医院。こんなところが平気で残ってるってことに感動。

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建物のつくりが独特で面白かった。残留物も多くて、病室の壁に書かれた漢詩とか、手術台とか、貼り紙とか、謎のレントゲン写真(これは誰かが持ち込んだ説あるけど)とか、ニヤニヤしてしまう。
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窓から差し込む光が、綺麗だった。

ここにはスニーカーで行きました。案の定、ガラスの破片が靴底にブッ刺さったので、サンダルで行かなくて良かったです。

 

 

他にもちょこちょこと行ったけれど、まぁ、それはまたの機会に。ではでは。

 

 

 

 

 

 

2019/12/28

今年も終わる。来年が来る。来年が来て、また今年が始まる。何言ってんだ。

 

僕は12月30日が仕事なので、全然終わってないのだけれど、今日から9連休の人が世の中には沢山いるらしい。だから、今日、街を歩いていると終わりの空気を色濃く感じる、気がする。

 

最近、文章が読めない。本を読もうと思って開いてみても、数行読んで、あ、頭に入ってこない、ってなって悲しくなって、閉じる。その繰り返し。本当に悲しい。

 

今年はなんだか、あまり良い思い出がない。日々が淡々と続いて終わっていった、それだけ、みたいな1年だった。

 

大切なものや大切にしたいこととの距離を、測り損ねて、死にたくなることが多い。死なない。でも、今年はどうしても許せなかったことを許せた。どうやって許したか、って、自分も同じことをしてみたんです。くだらねぇ。呆気ない。こんなことのためにおれは苦しんでたのかよ、って思った。やってみると超簡単で、最悪で、悲しくなった。悲しくなってばかりだ。

 

本当の自分なんてものは幻想で、自分は常に流動しているんだと思い知る。理想を夢想して生きていける幸せ者は、イコール、ただの馬鹿だ。次の瞬間の自分も分からないはずなのに、分かったふりして生きて、そのうち本当に分かったつもりになって、自分ってのはこういう人間だとか勝手に語り始めちゃって、滑稽。

 

酔っ払っているのか、いないのか、それすら曖昧。このポンコツな脳味噌が愛しい。僕にはこの脳味噌しかない。これが僕の全てで、この世界の全てで、それはそれは馬鹿らしい。陳腐で絶対的な神様。結局、神様は自分の中にしかいない。お前も、お前も、お前もお前もお前も、みんな神様なんだよ。

 

くだらないことばかりだな。

でも、それが、けっこう楽しいんだよな。

 

 

▪︎

いつまで経っても大人になれないままで大人になってしまった。矛盾を飼っている。飼い慣らせない。ダサい。

 

塞がることのないピアスの穴とか、元に戻らない割れた舌先とかが、恥ずかしくなる歳になるんだろう。きっと、思っているよりもすぐに。

 

高校生の頃に覚えた酒とセックス。飽きもしないまま平成は終わった。思考回路は変わらないまま、身体だけが年老いていく。

 

まだ24歳だけれど、もう24歳だから、多分すぐに死んでしまうんだと思う。

 

それだけ。