憂き世話

世界の極一部である。免れることの出来ない真実。僕は世界の極一部である。取るに足らない世界の極一部である。居なくなったところで痛くも痒くもない世界の極一部である。だから、世界から乖離したいと願う。いや、乖離とまでいかなくて良い、ただ、少しだけ世界から外れてみたい。飲み込まれている事を当然にして生きていく生命で在るのは寂しい。折角、人間であるのだ。深い思考の可能性を持つ脳味噌を組み込まれた人間であるのだ。僕が一つの世界だ。僕という世界だ。君の世界とは違う、僕だけの世界だ。君の見る景色は君の脳味噌で処理される。僕の見る景色が君の脳味噌で処理されることはない。僕の見るものと君の見るものとは同じようでいて異なる。それはまさしく君だけの世界だ。君が頭の中で生み出すのは君という世界だ。そうだ、僕という世界だ。世界の中で生きる、世界だ。僕は。