憂き世話

誰も居ない様な夜だった。まるで、孤独の様だった。紫煙が空気に溶ける事に意味は無かった。黒い空に穴が空いていて、それは突然、視界の上へ上へと泳いでいった。此処はゆっくりと、しかし、僕達の思いもよらない速度を保っている。知っているようで分かってはいなかった。指先にこびり付いた。頭の中には何も無かった。感覚は生きていたが。耳を澄ますと室外機が唸る音、トラックのタイヤが地面に擦れる音、遠くで人の声が音階を作っていた。全てに意味は無い。僕はただの塊だった。時間を消化して、只々朽ちていく、塊だった。此処はそんな物で溢れている。正に地獄ではないか。塊は塊を喰らい、塊を排泄し、塊を産み出す。此処は何処だ。此処は何だ。