汽車

汽車に乗っている。田舎なので、電車ではなく汽車。通路を挟んだ向こうの席に老夫婦が座っている。老夫婦は、この汽車に乗り換える前の汽車にも同乗していた。もう車を運転していないのかもしれない。だから汽車に乗っているのかもしれない。それにしても、汽車を乗り継いでまで行きたい場所がこの田舎にあるのだなぁ。何もないようで素敵なものはわりと沢山あるのかもしれないなぁ。夫の紫色のアウトドアのリュックがパンパンに膨れているのと反対に、妻の青色のリュックは萎んでいる。二人は仲が良さそうにずっと話をしている。素敵だなぁ、と思う。いつまで経っても仲良くどこかへ出掛けられるような二人。窓の外を眺めて何を話しているのだろう。僕には山と田圃しか見えないけれど、二人には何かが見えているのだろう。