憂き世話

たまたま街中であなたを見つけると、それだけで嬉しいような悲しいような変な気持ちになって、思考が停滞してしまいました。


あなたがここを去ってから、もう何度夜が来て、その度、私は何度暗闇へ浸されたのか、もう分かりません。身体を濡らす暗闇が乾く前に、また新しい暗闇が私をひたひたと飲み込んでいくので、いつまで経っても糊の利いたパリパリのシャツを着ることができません。


私たちは5年近い間、隣にいたのに、あなたは呆気なく他の人のところへ行ってしまいましたね。私ひとりがあなたの側から離れるのを嫌がって、迷惑をかけてしまいました。


本当は今でも、まだ、縋り付きたいと思ってしまうことがあります。でも、そんなことを望んでも、何も、良い方向へは向かわないし、あなたが幸せになれないと知っているので、我慢します。


私には、あなたの幸せを創ってあげることができなかったのです。私は幸せだったけれど、あなたの幸せはここにはなくて、だから、あなたはここを去ったのですね。
私が苦しむだけ、それだけのことで、あなたの幸せが保証されるのなら、それで良い。あなたの幸せは私の幸せでもあります。だから私は苦しんでも大丈夫。
私はあなたの幸せを創っている一部になれたのです。隣にいては創れなかったそれを、今は、少しだけ支えることができているのです。私は、幸せなのです。

 

今日、見つけてしまったあなたは楽しそうに笑っていました。
あなたが私を思い出すことがあるならば、あなたの選んだ道が間違っていないということだけ覚えていてください。

間違いなんて、どこにもないのだということを忘れないでください。


そして、あなたが嫌じゃなければ、で良いので、あなたがどこにいるとしても、私のことを忘れないでいてください。