2018/09/29

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雨が降る。

草木は濡れて葉先から雫を滴らせる。地面を無数の水滴が叩く音。それが雨音なのか、見渡す限りの樹々がその葉から水滴を落とす音なのか、判断できない。音は川のせせらぎのようにも聴こえる。そういえば近くに小さな渓流がある。空から降る水が地に落下する音と地から湧く水が流れる音が混ざり合って、聴覚全てを埋め尽くす。

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今日もまた神様に会いに行った。先週以降、僕は完全に魅せられたようで、生活の中のふとした瞬間にこの苔むした樹皮や躍動する枝を思い出すようになった。

雨の中、ただ聳え立つ巨樹。晴れていても曇っていても雨が降っていても、そんなことは問題ではないのだろう。明日は台風が来るらしい。そんなこともきっと問題ではない。巨樹はこの場所に、じっと聳え立っている。

雨音以外に聴こえる音は自分の呼吸音とぬかるんだ地を踏む足音だけで、時間など初めから無かったかのように錯覚する。あるのは森と自分と巨樹だけだった。今ここで蠢くあらゆる感情は全て自分の中から湧き出している。それらは圧倒的な無に包まれている今、不純物のようにしか思えない。くだらないものを持って生まれてしまったな、と思う。

 

巨樹はただただ聳え立っている。