2021-01-01から1年間の記事一覧

憂き世話

生きていたらいつか死ぬ、ってみんな知ってるはずなのに、それを考えている人ってあまりいない。自分が死ぬことを勘定に入れて生活をしている人ってどれほどいるのだろうか。人間だって生き物だ。いつ死んだっておかしな話ではなくて、例えば、あと三秒後に…

2021-10-7

朝起きるのがこんなに難しいとは、1年前までは思ったことがなかった。起きられなくて、仕事を休んだ。連絡だけしてまた眠る。また欠勤。 朝も昼も食べずに一日中眠っていた。 最近は、面白い夢を見る気がする。いつも内容は覚えていないけれど。だから、ずっ…

2021-09-20 : 味噌

脳味噌みたいなグロい気持ちの悪い塊がさ、どんな可愛い女の子にも格好の良い男の子にも、天才にもクソ馬鹿にも、一人ひとつ、備え付けられてるらしいんだけれども、だけど、その実物を見たことのある人って、まぁ、いなくて、僕らは脳味噌とかいうグロい気…

THE PARK

2020年、私の敬愛するギタリストが死んだ。自殺だった。コロナ禍と呼ばれる状況が一向に解決しない中、2020年は多くの人々が自ら命を絶った。その中の1人が彼女だった。アナウンサーが彼女の名前と年齢を読み上げ、反射的に目を上げるとテレビ画面に「自殺」…

2021-08-10

死ぬ勇気があるとすれば、僕はそれを生きる勇気として使っていきたいな。 と、そんな風に思った。

2021-07-25

救急車の通過数が明らかに多くなる季節、夏。 夏は人を容易く殺す。皆さん、暑さには気をつけて。健やかな生活を。 東京オリンピックが開幕して数日が経った。僕は運動を憎んでいる(マジで憎んでいる)ので観ていないけれど、それでも情報は色々なところか…

憂き世話

「あの人と復縁する気はもうないですよ。あの人がどう考えているのか分からないですけど、僕はもうあの人とどうこうってのは考えてないです。振ったのは向こうだし、僕は振られた側でもあるので。あの人はたぶん愛されたい人なんです。愛されたい、って感情…

2021-07-11 : 特に意味のない

まだ早い夜の窓際で煙草の煙をふかしている、人差し指の第一関節と第二関節を足した程度の、全長がわりと大きめな甲虫が、わりと大きめな羽音を鳴らして網戸へ飛びついてきた。それを見て、あぁ、また夏が来てしまった、と僕は少し憂鬱な気分になる。肺に溜…

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就職というものについて、真剣に向き合わなければいけない時が来てしまった。自分に向いている仕事、自分がやりたい仕事、そんなものは実際にその仕事をやってみないと分からないのに、どうやって決めれば良いのか分からない。 実際に自分がどんな仕事に就く…

憂き世話

吸って、吐く。 これを何百何千何万回と繰り返す滑稽さは全生命共通の、いわばこの世界の理。 思い切り吸って、吐かない。 たった数十秒で僕は苦しい。 繰り返して繰り返して、もうそれが普通になって、僕は数十数年を生き延びているらしい。 吐く。吸う。 …

憂き世話

あんたの弾くピアノが好きだった。普段は不器用な癖に、ピアノの鍵盤を叩くその時だけは、普段からは想像もできないほどの滑らかな運指。繊細なタッチで、情緒的な音を鳴らす。器用ですね、と僕が言ったら、あんたは「何その感想、変なの。普通はすごいです…

憂き世話

文章で人を生かしてみたかった。 僕の書く文章が、誰かの心(そんなものが存在するのだとしたら)に、薬物のように作用して(たとえ副作用があったとしても)、たとえば喜び、もしくは怒り、哀しみ、楽しみになれば、そして、それらがその誰かの生活にとって…

2021/5/10 : 回想 Happy Mother's Day

花の寄せ植えを母にプレゼントした。花の寄せ植えを買いに行ったのにウツボカズラに一目惚れして買ってしまった。格好良い。 寄せ植え、母が喜んでくれて良かった。 ________________________________ 夜ご飯を食べ終わった頃から、身体に電気が走るようなん…

憂き世話

頭痛。内臓が腐っている。 融解する。固体と液体の狭間。融解。液体が流れる。黒が赤へ。 昼下がりの雑踏。夜行性の動物が一匹。目を開くことが困難だった。声。街に溢れる音。僕の呼吸音は街の一部と化す。匿名の命が蠢く街。僕に名前は無い。手を握ること…

2021/05/06 : Vomiting Green

ゴールデンウィークが終わった。 ゴールデンウィークが終わった直後、深夜3時、吐き気に起こされる。トイレに駆け込むと空っぽの胃が収縮して、無理矢理に何かを吐き出そうとする。全力を振り絞りやがった胃が、僕の食道と口腔内、そして便器へと送り出した…

憂き世話

天井を見上げている。頭の中は騒音と言葉の海。放心できない。放心できないまま、ただただ天井と向き合っている。 馬鹿野郎。世界はおまえの脳味噌で完結してしまうんだよ。おまえの見てる世界はおまえのもんだ。分かるか? あの太陽も、あの美人も、あの花…

憂き世話

河蜻蛉が、舟人が櫂を漕ぐような動きで羽を振り、初夏の川縁の空中を泳いでいる。緑掛かった虹色の体躯に四枚、漆黒の羽。夏の虫の体色に虹色が多いのには何か理由があるのだろうか。金蚉、黄金虫、玉虫、黒蝿、河蜻蛉。時に、日の光は、彼らの表面を滑り、…

憂き世話

分裂する。 分裂する? 意味が分からないけれど、確かに僕は、これから分裂するのだ。と思う。 世界はひとつの塊だ、と言う人と、世界は多数の個の集合体だ、と言う人がいる。僕は、どちらでもよいと思う。どちらでもよいと言う。 あ、そういえば、明日は日…

2021/4/20

この口から吐き出す言葉に正しいも間違ってるもクソもへったくれも無いだろ。へったくれ、って何だ? 知らねえ。どーでもいい。例えば、世界の始まりを「無」だと考える人々がいる。「無」から「宇宙」が生まれて、そっから「銀河」、「太陽系」、「惑星」、…

憂き世話

如何なる文明においても、人々は、踊り、歌い、言葉を話してきた。それらは各地でそれぞれに自然発生し、そして現在、それらは、混ざり合い、排除し合いながら、所謂「ひとつの世界」を築く重大な要素となっていること。 伝播者がいなかった、とは言い切れな…

憂き世話

友人と酒を飲んだ帰り、ふと目を開くと夜空が見えた。 自分は何をしているんだ? と思考を巡らす。あ、寝ていたのか、では、ここは? 背中にゴツゴツとした硬い感触。心なしか鉄臭い風が鼻を掠める。夜空から視線を地平の方向へ送る。首を回すと耳元でジャリ…

水底の猫 : 一〇

「大丈夫かっ」 父の大きな声が、耳が痛いほどの近くで聞こえた。水を吸って何倍もの重さになった服が智一を地面に押さえつけている。起き上がろうと腕に力を込めてみるが、身体は少しも持ち上がらず、智一は空と対峙する恰好のまま動けなかった。酸素が薄い…

水底の猫 : 九

水の中は意外に暖かかった。さっきまでうるさく響いていた蝉の声も聞こえない。智一は沈んでいく身体を自分のものではないように感じた。身体はこんなに軽かったのだな、中身が入っていないのではないか、そんな風に思う。呼吸をしようとするが、身体中が水…

水底の猫 : 八

智一が目を覚ますと、もう太陽は真上に昇っていた。昨日の夜は、なかなか眠れずに居間で見てもいないテレビをつけて重たい頭を床に転がしていたのだが、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。硬い床で寝ていたせいで首が鈍く痛む。時計を見ると一一時半を…

水底の猫 : 七

今日はもうないのだろう、と思っていた葉月からの着信を携帯電話が知らせたのは午後九時を少し過ぎた頃だった。智一はいつも通り切断ボタンを押す。縁側に向かい、ビーチサンダルに足を通したところで二回目の電話がかかってきた。二回目がかかってくること…

水底の猫 : 六

その日、智一は柄の黄色い虫取り網と青い蓋のプラスチックの水槽を持って朗の家へ向かっていた。水槽の蓋には覗き窓のようなものがついていて、そこがパカパカと開くようになっている。 「智くん、虫を捕まえに行くだか」 佐藤のおばさんが玄関前の植木鉢に…

水底の猫 : 五

盆の二日目は「墓参りに行くけ、早く起きんさい」という母の大声に眠りを遮られて始まった。油断すると張り付いてしまいそうな瞼をこじ開けて時計を確認すると、まだ朝の八時だった。 持田家の墓地は集落の外れの山の斜面に沿って作られている。この集落には…

水底の猫 : 四

夏だというのに母が浴槽に張る湯はひどく熱い。冬にこの温度ならば丁度良い塩梅であるのかもしれないが、夏に浸かるには酷な温度である。智一が熱くて入れないと言っても、母は「風呂は熱くないと入った気がせんけなあ」と聞く耳を持たない。小さな頃は我慢…

水底の猫 : 三

家へ帰ると祖母が玄関の前で迎え火の準備をしていた。 「あら、智くん、おかえり」 左腕で苧殻の束を抱え、右手に火箸を持った祖母が智一に気付いて、にこりと笑いかける。 「迎え火を焚くけ、お父さんとお母さんを呼んできてえな」 智一の家では、毎年、盆…

水底の猫 : 二

「なんでいつも電話に出てくれんの?」 鳥居をくぐり、苔むした長い石段を登り終えると、蝉の鳴き声に割り込む葉月の不機嫌そうな声が耳に入る。葉月は社の濡れ縁に腰掛けて、両足をぶらぶらと揺すっていた。夏の日差しは人間を焼き尽くそうと必死なのに、葉…