憂き世話

頭痛。内臓が腐っている。

 

融解する。固体と液体の狭間。融解。液体が流れる。黒が赤へ。

 

昼下がりの雑踏。夜行性の動物が一匹。目を開くことが困難だった。声。街に溢れる音。僕の呼吸音は街の一部と化す。匿名の命が蠢く街。僕に名前は無い。手を握ることが困難だった。口を合わせることは簡単だった。夢はいつまでも覚めない。雑踏に紛れて泣く。僕は誰でも無い。匿名の悲しみ。緩やかな自殺を繰り返す。口腔内の貴女の残り香。誰も知らない、悪戯な、秘密。人生の群れが蠢いている。

 

春。