夕方、窓辺で煙草をふかしながらぼーっと空を眺めていると一羽のツバメが視界を通り過ぎて行った。こんな時期にまだツバメがいるなんて、と不思議に思う。他のツバメと一緒に渡りそびれたのかもしれない。もしそうならば、早くみんなに追いつけるようにと願う。この集落は、もうこんなにも寒い。
夕日が雲を橙に染める。青かった空の色は、夜の闇に飲み込まれる前の短い時間だけ薄い水色に変わる。青が薄れて、そしてまた深い青へ変化して、最後には黒く塗りつぶされる。
橙の雲の割れ目に薄水色の空が覗いていて、そこに小さな光が見えた。一番星。
夜空に無数に輝く星の中の幾つかは、暗くなる前に輝き始めるのだ。
そういえば、星が輝き始める瞬間を見たことがない。夜空を見上げると無限とも思えるほどの数の星が輝くが、それらが輝き始める瞬間を一度として目にしたことがない。見たことのある人は、果たしてどこかにいるのだろうか。
昼間に近所の畑で野焼きをしていた。煙の匂いがまだ空気中に残っている。秋の匂いだ。煙たい空気に煙草の煙を吐き出す。