人は死ぬ。

あいつが死んだらしい。らしいってのは風の噂で聞いたから本当に死んだのかは分からないって恋人が言ってたから。

死んで欲しいと思ってたけど、正直、どーでもいい。死んだんだ、へえー、って感じ。

 

問題は、その事実を恋人の口から聞いたことで、まぁ恋人以外にあいつの話をする人間はおれの周りにいないのだけれど、恋人はあいつのことをたぶん今でもどっかで抱え込んで大切にしてんだろうな、ってのが改めて感じられて、うざったい。

 

ショック受けたんだってさ。まぁ、そりゃそうだよな。あんなに好きだったんだもんな。あんなに好きだった人間のことを、どーでもよくなるなんてことはないよな。

 

でも、そんなこと、おれには関係ない。黙っていてくれ。

 

おれは未だにあの頃のことをふとした瞬間に思い出して、死にたくなってんの分かってんのかな。お前らのせいでおれは少しおかしくなってるってこと気付いてんのかな。お前ら、って括ってしまうしかないこの虚しさとか理解できるのかな。

 

できないんだろうな。

してもらおうとも思ってない。

 

いつまで付き纏ってくるんだろう。

 

うざったい。

 

 

 

2019/06/29:雨のち曇り

朝、目が覚めると6:40。

今日は会社のボランティア活動で6:30集合。集合場所までは車で30分。アラームは5:30にセットしてたはずだった。で、目が覚めたのが6:40。

終わってる。

もう諦めて、上司に連絡もせずにまた目を閉じる。

土曜日だから許してほしい。無理か。

終わってる。

 

最近はなんだか、いろんなことの調子が狂っている。生活は難しい。朝起きて、昼間働いて、夜寝るだけのはずなんだけどな。

恋人にはもう友達と変わんないね、とか言われる。

セックスもしたいと思わなくなったし実際しばらくしてないし、会う頻度も減ったし、ってお前が減らしたんだろって思うけど、増やす努力をしてない僕も悪いのでお互い様。

この間恋人は大学の頃の仲良しグループと遊びに行ったけど、その中には元カレもいて、「その人とは3ヶ月しか付き合ってないしキスしかしてないしもう友達としか思えない」ってまあそうなのかもしれないけど、僕にとっては元カレは元カレでしかないのでお前の理屈なんて分からない。

恋人は平気で元カレたちとのあれこれを僕に話してくる。けっこうエグい話まで。隠すよりは良い、って思ってんのかもしれないけど、普通そんな話聞きたくないだろって思う。僕がおかしいのかもしれない。普通は平気なのかもしれない。他人のことは知らない。どーでもいい。

あっちが働き始めたら色々変わるんだろうとは思ってたけど、思った通り過ぎて笑える。

まあ悪いのは相手ばかりではない。僕も悪い。

 

寂しさで簡単に人は狂う。

 

最近、僕は今までの100倍、自分を中心に置いて生きるようになった。誰かのことを考えて生きることが正しいとずっと思ってたけど、実はそれってめちゃくちゃ意味のないことだと最近思い知ったから。

誰かのことを考えるのは自分のことを考えていてほしいからで、見返りを求めているだけだって気づいた。けっきょく誰かのことを考えてるフリをして自分のことしか考えてないのなら、最初から自分のことを考えていたほうが良い。良いのか?  まぁ、いいか。って感じ。

 

恋人は最初から自分中心に生きてるタイプなので、羨ましかったんだよな。

 

この人とは色々あったけど、色々あったこと全部が引っかかり続けていて息苦しいままここまで来て、けっこう頑張ったんだけど、なんだかやっぱり上手くいかない。

また分かんなくなってきた。

 

自分にないものを持ってる人になりたいと思う。きっと彼女は僕にないものを持っていたんだと思う。僕はそれを羨ましがって、嫉妬して、それで壊れかけている。執着か愛情かなんでどうでも良い。一緒にいるっていう事実があれば、良い。良かったのにな。

 

たしかに歩き続けている。

どこに向かっているのだろう。

目的地って何処だったっけ?

 

早く、安心したい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

憂き世話

「死んでしまえ」

ふと、口から出た言葉。誰に向けた言葉なのか、自分でも分からないけれど、死んでしまえ、確かに今、私はそう思って、そう口にした。

 

「死んでしまえ」

 

いつだったかな。元カレに言われたことがあった。

酔った勢いで居酒屋で知り合った知らない男と知らないホテルでヤって朝帰り、部屋で待ってた元カレに「知らん奴とヤっちゃった♡」と暴露したら食い気味に言われた。

100%、いや500%私が悪かった。

けど、それでなんか逆ギレしたのが原因で色々崩れてって、結局元カレは元カレで浮気してたのが発覚して、そんで別れたんだっけな。バカじゃん、私。元カレもバカ。

でも男と女なんてそんなもんじゃん。

 

いくら清楚を気取っていても、腹の底ではイケメンとヤりたいとか思ってるわけで。

いくら彼女一筋とかほざいてても、腹の底では可愛い女の子を求め続けてるわけで。

 

電車が来るまであと四分。

目の前で立ったまま寄り添って、同じイヤホン使って、ひとつのスマホで同じ動画見てるカップル。

お前らは本当は動画なんて見てなくて、この後どっちかの部屋で行われるあんなことやこんなことのことばっか考えてんだよな。

 

あー、くだらねえな。

 

「死んでしまえ」

 

もう一度、言ってみる。

誰に死んで欲しいんだろう。べつに誰にも死んで欲しくない。

嫌いな奴はたくさんいるけれど、死んで欲しいとまでは思わない。だって、みんなそれぞれ頑張っていて、必死で、いろんなことを考えて苦しんでる。苦しいけどなんとか生活をこなして、生きている。

頑張れ。

 

 

あ、そうか。

死んで欲しいんじゃないんだ。

 

 

これから電車に乗って、先週知り合った男に会いに行く。そこまでイケメンではないけれど、まあまあ背が高くて、まあまあなスペックのあの男。

 

行き着く先は?

 

確実に、愛じゃねえよな。愛そうとも思ってないし。きっと向こうも。

 

あー、くだらねえな。

 

あと二分で電車が来る。

 

「死んでしまえ」

 

目の前のカップルはイヤホンで片耳を塞いでいるし、動画に夢中なフリして夜のお楽しみに向けてあれこれ思い巡らすのに夢中だから、私の呟きなんて雑踏音の一部でしかない。私の後ろには誰も並んでいないから、私の声は私にしか聴こえていない。

 

「死んでしまえ」

 

あと一分で。

 

男と女なんて、分かり合えないもんな。

私と誰かなんて分かり合えない。

私と私も分かり合えない。

死ぬまで、ひとり。

 

あと何秒?

 

 

 

 

2019/06/08:雨

明日は試験だ。勉強をしようと参考書を開いて、眺めて、飽きて、スマホをいじって、参考書を眺めて、飽きて、スマホをいじって、を繰り返している。もう夕方だ。今日は天気が悪くて不快。

 

1ヶ月くらい前に「愛がなんだ」っていう映画を観た。あれを観てから心の中で何かが引っかかっているような気がする。1ヶ月経ったけど、何が引っかかってるのか未だに分からない。愛なんてもの、本当に存在するのだろうか。愛に見せかけたエゴとかなら、そこら中の男女の間に溢れてるんだろうけど。

 

愛されたいわけじゃないと思ってたし、愛してあげたいと思ってたけど、そのどちらも間違いだったのかもしれないなぁと、最近は考えている。

愛してもらえなくても、とりあえず一緒にいてくれればいい。僕があの子を思い切り愛して、不安なく生きていけるようにしてあげたい。そうなれば1番良いとは思う。

でも、愛を差し出し続けても、それをなんてことないものみたいに、当然でしょう、みたいな顔で受け取られ続けると、なんだかおかしくなってくる。与え続けるだけじゃバランスがおかしくなってくる。

知らない間に与えられてたものとか、もちろんたくさんあるんだろう。それに気付けないで文句ばっか言ってる僕は、自己中心的な人間なんだろう。結局、見返りを求めて動いてるだけだ。愛されたくて愛してる。超ダサい。

それに、僕が愛として差し出し続けていたあれは愛なんかじゃなくて、自意識優越感傲慢怠惰罪悪感嫉妬独占欲etc.をグチャグチャに詰め込んでミキサーで砕いて「愛」の形した型に流し込んで冷凍庫で一晩固めたみたいな感じの何かだったってこと、薄々気付いてた。

そんなもん渡され続けても困るよな。だって見た目は愛でも蓋開けてみたら汚い塊なんだもんな。

でも、僕はそれしか渡せない。僕の精一杯は、それ。

あの子は、いつも蓋開けてくれてんのかな。蓋開けずにそのまま置いてるんだろうか。開封するのが勿体無いって、大切に大切に置いてくれてるんだろうか。もしも、そうだったら嬉しいけど悲しい。早く開けて欲しい。

もしも、毎回ちゃんと開けてくれてるなら、それなら良い。

どれだけ考えても、これまで渡してきた「愛」たちの蓋が開いてるのか開いてないのか分からない。

 

「分かり合う」なんて幻想だ、って誰かが言ってたな。誰だっけ。

 

このままじゃ、明日の試験に受かる気がしない。やる気スイッチなんてどこにもないし、楽な生活なんてここにはないし、欲しいものは手に入らない。それが人間として生きるってことです。クソみたいだな。

 

頭の中がまとまらない。

 

 

 

 

 

 

憂き世話

溜め息を吐いた。何か悪いものが、この薄い不恰好な唇の隙間から、ふっ、と流れ出していく想像。しかし、何も変わらない。あの男はここにいない。今頃どこかで適当に会える適当な女と適当に酒を飲んで適当な相槌をうっているんだろう。

仕事帰りに買ったコンビニ弁当はもう冷めてしまった。生姜焼き弁当、ご飯大盛り。しょーもない晩御飯。発泡酒の缶を開ける。毎日、五百ミリリットルを一本。ビールは高いから買わない。味の違いもわからないし。

恋なんてもの、もう忘れてしまった。あの男が好き。キスしたい。セックスしたい。うん、確かにそう思う。でも、それだけじゃ恋ではないのだろう。恋ってのは、もっと、ガーッとしたどうしようもない感情を持て余して、もうどうしようもなくて、どうしようもなく幸せな気持ちのまま毎日を過ごすあの感じのことなんだと勝手に思っている。

発泡酒は苦い。苦いけど美味しい。これが飲めないやつはまだまだ子供。これを不味いとかいうやつはまだまだ子供なんだよ。ビールは高いから買わない。てか、買えない。

発泡酒はビールの紛い物だ、ってあの男は言ってたな。味の違いが本当に分かんのかな。

 

紛い物で良い。だって、これは恋ではないし。

 

 

 

憂き世話

唇を合わせる。そして、舌を合わせる。粘膜と粘膜の触れ合う音。唾液の混ざり合う音。今まで知らなかった他人の中の匂い。舌先が触れる他人の頬の内側の柔らかさ。

微かに血の味がする。気づかないふりをする。自分の怪我か、相手の怪我か、分からないし、どちらでも良い。混ざり合ってしまえば、どちらでもなくなる。一方で、どちらでもあるけれど。

こうやって何度も、何人もの他人と混ざり合って、そして、どんどん自分が薄れていく。見た目も性格も何も変わらないままに薄れていくのは一体、自分のどの部分なのだろうか。

他人の中に混ぜ込んで置いてきた自分は、これから先どうなっていくのだろうか。どこかでまた、知らない誰かと混ざり合ってどんどんと薄れていくのだろう。

そうやって薄く薄く広がって、シミみたいになって、消えない。この身体が無くなってしまっても、消えない。ただの汚れだ。世界を汚して、勝手に死んでいくだけだ。

そして、同時に汚されている。

汚く混ざったこの色が何色なのかもう分からない。目の前の壁に塗りたくられた色彩が、芸術なのか汚れなのか判断できない。何かを描いているのか。汚しているだけなのか。

綺麗な絵が描けなくても、誰かの絵の一部になれたら嬉しい。

微かに血の味がする。唇を離して、目の前の男の首元を舐める。唾液に混ざって、血の赤色。もう一度舐める。赤色を目の前の男の肌に塗る。これでも芸術のつもり。汚い芸術だって笑えよ。

 

 

 

 

 

2019/04/06

昨日は会社の歓迎会だった。会場は大学生の頃に住んでいたアパートの近所にある店。幹事を任されて適当にこなしてタクシーで二次会へ。車を店の駐車場に置かせてもらっていたので、今日の朝、取りに行った。

以前住んでいたアパートの前を通り過ぎる。僕がいた部屋にはカーテンが掛かっていた。僕は三階に住んでいたので外から大して見えないだろうとレースカーテンをつけていなかったけれど、いま住んでいる人はちゃんとレースカーテンをつけている。生活力。掃除だとか自炊だとか、洗濯物をたたむだとか、僕は普通のことができなかった。今もあまりできない。

 

あの部屋で僕は二人の女の子と過ごした。泣いたり泣かせたり、笑ったり笑わせたり、けっこう色々な思い出のある部屋だった。もうあそこには知らない誰かが住んでいる。あの部屋で誰かが知らない人生を過ごしている。あの部屋で泣かせたり笑わせたり、泣いたり笑ったりしてるのかもしれない。

 

社会人になってもう一年が過ぎた。たった一年。たった一年と少し前に、僕はあの部屋にいた。なぜだか遠い昔のように感じる。

 

人生はさらさらと流れていく。辛かったことも楽しかったことも、もう過去という海に到達して、溶け合って形を無くしている。

過去に潜って、息苦しくなって、浮上。浮上して見える空は曇り空で、なんか虚しくて、また潜る。で、また息苦しくなるんだよな。馬鹿らしい。

 

501号室。

 

憂き世話

ふっ、とすぼめた口から息を吹く。目の前にぶら下がる小さな蜘蛛が、呼気に当てられて、ふらふらと揺れる。私は空気中の酸素を消費してその分、二酸化炭素を多く吐く。そういえば昨日、炭酸水をたくさん飲んだから今日の呼気にはいつもより多めに二酸化炭素が含まれてるかもな、なんてぼーっと考えて、考え終わってもまだ蜘蛛はふらふら揺れている。こいつがふらふらしてるのは、私の吐く、酸素が薄くて二酸化炭素が濃い呼気に酸欠になってしまったからかもしれない、なんて、はぁ、我ながら馬鹿らしくて悲しくなる。

 

あいつは虫が嫌いだった。部屋の中に小さなよく分からない羽虫やら蚊やらハエやらが現れる度に「脚が六本あるなんて!」といつも喚いていた。蜘蛛には脚が八本もあるんだよな。そういえばこの部屋で蜘蛛を見るのは初めてかもしれない。少なくとも、あいつがここにいた間には見たことがない。天井からするすると糸を伸ばして目の前に現れたチビ。

あいつは蜘蛛を見たらちゃんと「脚が八本あるなんて!」と喚いたのだろうか。それとも、いつもみたいに「脚が六本あるなんて!」と喚いて、私が「いや蜘蛛は八本ね」とあいつの発言を訂正し、指摘されたことに不機嫌になってしばらく黙り込むのか、自分の間違いが恥ずかしくて照れるだけで終わるのか、それはあいつ次第なんだけど、多分、あいつは恥ずかしくて照れながら「でも虫は虫だから!」なんて叫ぶんだろうな。

思えば蟹も脚が八本あるしわりと見た目が虫っぽいけど、あいつは蟹が大好物だったな。もしかしたら八本脚はイケるクチなのかな。あいつは、六本脚っていう形態に何かしらのトラウマがあるのかもしれない。六本脚だけがどうしても無理とかそんなの意味わかんないけど、大抵の動物は四本脚で、まぁ人間も四本脚みたいなもんで、たしかに二本違うと結構違ってくるのかもな。知らんけど。そうか、蟹って動物の二倍の数の脚が生えてるんだな、すごいな。とか思いながら、なんとなーくカニの画像をググってみると、なんと脚が十本もあって、ビビる。バケモンじゃん。さらに調べてみると、タラバガニは八本でズワイガニは十本らしい。あいつ、六本でヒィヒィ言ってたくせに、十本も脚が生えてるモンよく喜んで食えてたな。

 

あいつが今どこで何をしてるかなんて知らない。興味がないわけではないけど、わりとどうでも良い。もし、教えてくれるなら教えてもらおうかなって感じ。もし、知る機会があれば知るのもまあ良いかもなって感じ。

私はあいつが六本脚が大嫌いなことを知ってる。別に、だからどうってことはないけれど、知らないよりは知ってる方が楽しいのかもな、と思う。そして、あ、案外楽しかったのかもな、あの頃、と思う。

 

友人が半年後に結婚するという。8年付き合ってる彼女と。ガキの頃はやんちゃして暴れ回ってたくせに、高校出てからこれまで仕事を辞めずにしっかり働いて、そんで結婚か。

部活前に部室でコソコソ煙草吸って、授業なんてちゃんと座ってる方が少ないというかまず教室にいる方が少なくて、他校の女子と付き合ってんのか付き合ってないのかみたいな関係まで持っていって、無人駅の駅舎の影であんなことやこんなことしてそんで適当にさようなら、みたいな中学時代だったのに、もう立派な大人になっちまったな。そんで案外、一途だったな、お前。

 

結婚するって話を聞きながら酔っ払う。煙草を貰って吸う。久々に吸う煙草は不味かった。お前は、いつも文句ひとつ言わず煙草をくれる。

 

仲の良い友人が幸せなのは嬉しい。仲の良い友人なんてほとんどいないから、そいつらはみんな幸せであってほしい。

おれは年明け早々、彼女を泣かせてしまうようなどうしようもない男で、2019年の始まりは最悪だ。

 

とりあえず、また籍入れるまでに飲みに行こう。お前の彼女のこともよく知ってるから、お前の彼女の苗字がお前の苗字になるって考えるとすげえ感慨深い。大した祝い方はできないけど、許してくれ、ふたりを祝う気持ちは誰よりも強いから。

あー、この野郎、幸せそうに笑いやがって。

2018/12/29:雪

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昨日仕事を納めて、今日から6連休。年末年始にしっかり休めるのは嬉しい。と、思っていたら雪が積もる。この家の庭は無駄に広い。田舎は土地が安いから、無駄に広い庭を携えた家が多い。隣の家の庭もバカ広い。幼馴染がせっせと雪かきをする姿が見える。朝からご苦労様。

 

先日、近所のお婆さんが亡くなった。風呂の中で息絶えていたらしい。湯の熱と冷えた空気との温度差が老人を殺す話をよく耳にするが、きっとそれだったのだろうと思う。10月にそのお婆さんと話す機会があって、その時には数ヶ月後にこの人が死んでしまうんだなんてもちろん考えもしなくて、でも、そのお婆さんは死んだ。今日が葬式で、うちからは祖母がバスで葬儀場まで向かった。

 

人は死ぬし、冬は寒い。

雪は積もるし、溶ける。

起きる現象のほとんどは、たった数文字だけで表現できてしまう。

くだらない。

 

今年は暖冬だと言う。たしかに冬の匂いがしなかった。冬の冷えた空気を吸うと鼻の奥がツンとするあの感じ。「冬の匂い」ってのは、あの感覚を匂いに例えているんだと勝手に解釈していて、だからあれを勝手に冬の匂いだと思っているわけだけれど、それを今年は昨日初めて嗅いだ。例年より少し遅め。