2017/11/28 : 回想

埋火を聴くと、去年の冬を思い出す。

 

冬の冷たい空気が鼻腔を抜けていくあの感じ。あれを冬の匂いっていうのかもしれないなぁ、と思う。あの感覚を比喩的に言うのならば、たしかに「匂い」という言葉はしっくりくる。
埋火を聴くとき、春でも夏でも秋でも関係なく、鼻の奥にツーンとした冷気を感じる。その度に去年の冬の景色を少しだけ思い出して、いろんな気持ちになる。

「と、おもった」という曲が好きで、よく聴いている。
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わからないことのほうが
やっぱり多いです
これ以上いろんなこと
知らないままの方がいい

と、おもった おもった おもった
おもった おもった おもった
のです
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この曲に限らず、見汐さんの書く歌詞が好きだ。日本語の美しさとか儚さを感じる。一曲一曲がそれぞれ一冊の読み物みたいに思えるような歌詞。
先日、たまたま見汐さんのブログを見つけた。読んでいく中で『恋に関するいくつかのフィルム』というCDの存在を知った。埋火のファーストミニアルバム(かな?)。
曲目に「と、おもった」があったので聴いてみると、見汐さんの歌い方が『わたしのふね』の「と、おもった」と違った。『わたしのふね』を出すときには新しく録音し直したらしい。今まで聴いていた「と、おもった」よりも見汐さんの声と歌い方が少しだけ若いように感じた。『恋に関するいくつかのフィルム』の「と、おもった」と『わたしのふね』の「と、おもった」との間に流れたであろう時間に思いを馳せてみる。ふたつは、同じ曲でもやっぱり違っているのだろうな。

 

最近は空気が冷たくなって寒い日が続いている。数日前の朝方、外に出ると「冬の匂い」がした。あ、今日は霰が降りそうだなぁ、と思っていると、その日の夜、バイトを終えて帰る頃に案の定、雨に混ざって霰が降り出したのだった。空から氷が降ったのだから、多分もうすぐ冬が来る。

 

去年のものとは違う冬が来て、去年と違う「と、おもった」を聴いている。こうやって、少しずつ更新されていく日々にふとしたタイミングで気づく。去年の冬と今年の冬は、同じ冬でもやっぱり違っていくのだろうな。

 

と、おもった。