田舎のこと

実家のある辺りは山に囲まれていて、川が流れ、民家よりも田圃の数の方が多いような場所である。
幼い頃から生き物が好きだった。好き、というよりは生活の中に生き物がいることが当たり前のこと過ぎて、生き物と関わらざるを得なかったと言った方が良いのかもしれない。とにかく田舎なので生き物が多いのである。
特に両生類が好きでよく捕まえたり眺めたりしていた。一番好きなのはシュレーゲルアオガエルで、次はモリアオガエル。どうも自分はアオガエル系が好きらしい。カジカガエルは鳴き声が綺麗でアオガエルの仲間ではあるが、青くないのでそこまで好きではない。


祖母が管理する家の裏の畑では、夏になると毎年西瓜を育てている。地面を埋め尽くすように這う蔓の隙間をヒキガエルが歩いていたことがあった。ヒキガエルは蛙らしからぬ、のそのそとした動きをする。滅多に見つけることが出来ない蛙なので、見つけた時はとても嬉しい。ヒキガエルを触って愛でていると、頭の横の少し膨らんだ部分から白いベタベタしたものを分泌し始める。これは毒である。ヒキガエルを触ったその手で目をこすろうものなら失明してしまうかもしれない。実際にヒキガエルを触った手で目をこすったことがないので分からないが。


周りを見渡せば、常にどこかを鳥が飛んでいる。電線や木の枝にも止まっている。今まで見た中で興奮した鳥は、フクロウ、雄のキジ、カワセミの三種である。

まず、フクロウだが、野生の個体は一度しか見たことがない。中学校の帰り道、薄暗くなってきた空の下で自転車を走らせていると、電線に大きな鳥が止まっているのが見えた。鳶だろう、と思いぼうっと眺めていたが、近づくにつれて、鳶とは少し違う形をしていることが分かってきた。頭が丸っこい。目を細めてよく見ると、それは図鑑や動物園の檻の中で見たフクロウと同じ顔をしていた。フクロウが広い空の下に立っている姿は、なんだか不思議な感じがした。


次にキジ。キジは綺麗だった。鮮やかな色をしている。キジもまた中学校の帰り道、自転車に乗っていた時に見かけた。道路を緑色のキラキラした鳥が走り抜けていった。飛んでいたのではない、走り抜けていった。すごい速さだったので一瞬しか見ることができなかったが、宝石のような生き物だと思った。


カワセミも宝石のような鳥である。大きさは雀より少し大きいくらいで、青色をしている。カワセミは名前の通り、川の近くにいる。人生で三回ほどしか見たことがないが、あんなに綺麗な鳥は他にいないのではないかと思うくらいに綺麗な青色をしている。カワセミを見る度に自然って素晴らしいな、と実感する。


色々な生き物を見てきたが、どの生き物もそれぞれ可愛らしい見た目をしている。虫は見れば見るほど気持ち悪いが、動き方や飛び方なんかは可愛らしいものである。
生き物に触れ合える生活ができるということが自分の人生においてどんな効果を持つのかは分からないが、自然の中で生活することは嫌いではないし、嫌いになれるはずもなく、ふとした時にはやはり実家に帰りたくなるのである。