憂き世話

 

「人生は単なる付属品だ」

 

とあなたは言った。

 

「生まれたというその事実だけが、僕たちが生きている唯一の理由で、人生がああだこうだなんて後付けの娯楽みたいなもんなんだよ」

 

あなたの人生の一部にでもこうやって私が存在している。それも、あなたにとっては後付けの娯楽みたいなものかもしれない、と私は思う。

 

「ねぇ、いま、楽しい?」

 

私が問うと、あなたはちらりと私の顔を見る。宝石のような眼球の、その茶色い瞳のその内側に私の姿形が投影されて、視神経を伝った私の像が、あなたの脳内に映り込む。それは、虚像ではないのか、不安になる。私の姿形が、あなたの中にどのように映っているのか、私には一生わからない。

 

「楽しいよ」

 

あなたが言う。

あなたの付属品に付属する私。あなたにとっての後付けの娯楽に、すがりつく私。私はあなたの一部になりたいのだ、と、思った。思っただけで、私はあなたの一部ではないし、あなたは私の一部ではないし、なり得ない。

 

私の人生の一部にあなたがこうやって存在している。それは後付けの娯楽で、私たちは、ただ、生まれただけで、死んでいくだけで、だから、私は私の中に映るあなたのその輪郭が、たとえ虚像だったとしても、

 

「うん、楽しいね」

 

そう言って笑うことができるのだろう。