憂き世話

「そう、あの時から僕の性格はこんなに卑屈でどうしようもない匂いを漂わせ始めたんだと思います。どこか一点が腐り始めてしまった果物、そうだな、蜜柑とか梨とかそういうものを思い浮かべていただければ分かりやすいかもしれません。それまでは綺麗な色や…

憂き世話

猫が交尾中に出す声は、赤ん坊の泣き声に似ている。猫も夜中に交尾をする。人間と同じ。深夜に窓の外から聴こえてくる声は不気味で、猫が鳴いてるのか、赤ん坊が泣いてるのか、猫が鳴きながら交尾をして、それで、雌猫から赤ん坊が泣きながら生まれたのか、…

2020/01/02

年が明けて1日経った。 12月31日の23時前くらいに眠くなったので寝て、起きたら1月1日の午前2時で、ウケた。居間のコタツと夢の中で新年を迎えたマヌケな24歳。 1月1日は酒を飲んで寝ていたら終わった。 朝、起きて簡単なおせち料理と日本酒で朝食を済ました…

廃墟2019

今年は何故だか、廃墟によく足を運んだ。人が造って、人が捨てて、人気のない、自然に迎え入れられつつあるような場所たち。社会不適合感のある僕は、そういうところにふらっと訪れて、ボーッとして心の安寧を保っています。今は誰もいないけど、確かに人間…

2019/12/28

今年も終わる。来年が来る。来年が来て、また今年が始まる。何言ってんだ。 僕は12月30日が仕事なので、全然終わってないのだけれど、今日から9連休の人が世の中には沢山いるらしい。だから、今日、街を歩いていると終わりの空気を色濃く感じる、気がする。 …

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いつまで経っても大人になれないままで大人になってしまった。矛盾を飼っている。飼い慣らせない。ダサい。 塞がることのないピアスの穴とか、元に戻らない割れた舌先とかが、恥ずかしくなる歳になるんだろう。きっと、思っているよりもすぐに。 高校生の頃…

2019/10/5

夜になったら酒を飲む。これは義務。 最近はジャックダニエルをストレートで飲むのが最高だってことに気づいて、小瓶や中瓶を傾けている。コスパはあまり良くないけど、びっくりするくらい次の日に残らない。小瓶を一晩で一本空けても、次の日、何も残らなく…

憂き世話

吉本くんはいつも「楽して暮らして100歳で死にたい」と言っていたけど、中学を卒業してすぐ働き始めて、その仕事は全然楽なものではなくて、過酷な肉体労働。重いものを運んで、組み立てて、分解して、高い所の狭い足場をせせこましく歩き回るような感じの仕…

2019/08/29

8月が終わるってことは、夏が終わる。 盆明けくらいから一気に涼しくなって、朝晩は肌寒いほどだ。仕事でバイクを乗り回しているわけだけれど、今日の夕方はなんだか風が冷たくて震えながら運転した。 月曜日にふとチェストピアスを空けたい衝動に駆られて、…

2019/8/15

あと10分で今日が終わる。なのでこれを書き終わっている頃には2019/8/16になっているかもしれない。どーでもいいね。 中村佳穂の音楽を聴きながら、吉田棒一を読む。天才ってのはネットとか書店で、沢山沢山、目に耳に訴えかけてくるけれど、じゃあ実際どれ…

2019/8/1:令和、霊話

元号が変わってから良いことがない。本当にない。 親類が立て続けに亡くなったり、祖母が入院したり、彼女とうまくいかなかったり、仕事もうまくいかなかったり、その他諸々。 テレビを見てると、しょーもない話題か、悲惨な事件か、あやふやで訳の分からん…

人は死ぬ。 あいつが死んだらしい。らしいってのは風の噂で聞いたから本当に死んだのかは分からないって恋人が言ってたから。 死んで欲しいと思ってたけど、正直、どーでもいい。死んだんだ、へえー、って感じ。 問題は、その事実を恋人の口から聞いたことで…

2019/06/29:雨のち曇り

朝、目が覚めると6:40。 今日は会社のボランティア活動で6:30集合。集合場所までは車で30分。アラームは5:30にセットしてたはずだった。で、目が覚めたのが6:40。 終わってる。 もう諦めて、上司に連絡もせずにまた目を閉じる。 土曜日だから許してほしい。…

憂き世話

「死んでしまえ」 ふと、口から出た言葉。誰に向けた言葉なのか、自分でも分からないけれど、死んでしまえ、確かに今、私はそう思って、そう口にした。 「死んでしまえ」 いつだったかな。元カレに言われたことがあった。 酔った勢いで居酒屋で知り合った知…

2019/06/08:雨

明日は試験だ。勉強をしようと参考書を開いて、眺めて、飽きて、スマホをいじって、参考書を眺めて、飽きて、スマホをいじって、を繰り返している。もう夕方だ。今日は天気が悪くて不快。 1ヶ月くらい前に「愛がなんだ」っていう映画を観た。あれを観てから…

憂き世話

溜め息を吐いた。何か悪いものが、この薄い不恰好な唇の隙間から、ふっ、と流れ出していく想像。しかし、何も変わらない。あの男はここにいない。今頃どこかで適当に会える適当な女と適当に酒を飲んで適当な相槌をうっているんだろう。 仕事帰りに買ったコン…

憂き世話

唇を合わせる。そして、舌を合わせる。粘膜と粘膜の触れ合う音。唾液の混ざり合う音。今まで知らなかった他人の中の匂い。舌先が触れる他人の頬の内側の柔らかさ。 微かに血の味がする。気づかないふりをする。自分の怪我か、相手の怪我か、分からないし、ど…

2019/04/06

昨日は会社の歓迎会だった。会場は大学生の頃に住んでいたアパートの近所にある店。幹事を任されて適当にこなしてタクシーで二次会へ。車を店の駐車場に置かせてもらっていたので、今日の朝、取りに行った。 以前住んでいたアパートの前を通り過ぎる。僕がい…

憂き世話

ふっ、とすぼめた口から息を吹く。目の前にぶら下がる小さな蜘蛛が、呼気に当てられて、ふらふらと揺れる。私は空気中の酸素を消費してその分、二酸化炭素を多く吐く。そういえば昨日、炭酸水をたくさん飲んだから今日の呼気にはいつもより多めに二酸化炭素…

友人が半年後に結婚するという。8年付き合ってる彼女と。ガキの頃はやんちゃして暴れ回ってたくせに、高校出てからこれまで仕事を辞めずにしっかり働いて、そんで結婚か。 部活前に部室でコソコソ煙草吸って、授業なんてちゃんと座ってる方が少ないというか…

2018/12/29:雪

昨日仕事を納めて、今日から6連休。年末年始にしっかり休めるのは嬉しい。と、思っていたら雪が積もる。この家の庭は無駄に広い。田舎は土地が安いから、無駄に広い庭を携えた家が多い。隣の家の庭もバカ広い。幼馴染がせっせと雪かきをする姿が見える。朝…

いつの間にか生活ってもんが出来上がってしまっていて、出来上がった型通りに毎日を型抜きしてる。 くだらない大人になってしまった。こんな風になりたいわけではなかったけれど、なんとなくこうなるんだろうなとは思っていた。考えることを放棄して、現実逃…

分かろうとするから、わけが分かんなくなるんだろうよ馬鹿だなぁ、とか思いながら今日もアルコールで思考を溶かしている。 自己なんて他者との関係の中でなんとなく「あ、こんな感じか」てな感じで見つかる偶然の産物みたいなもので、ハッキリとした形のない…

2018/11/17:旅行後

旅先で恋人がイヤホンを落としてしまって、馬鹿だなぁなんて思っていたら自分も買ったばかりのイヤホンを落としてしまって馬鹿だ。帰りのバスの中、100均の腐った水面に腐った桃を叩きつけるみたいな音質のイヤホンで音楽を聴きながら、これを書いている。お…

2018/11/12

今日は月曜日。 選挙カーの大音量で起こされた。市議会選。「〇〇をよろしくお願い致します」「〇〇村の皆さん、お騒がせして申し訳ございません」「私、〇〇、〇〇と申します」。同じ言葉の繰り返し。どの車も同じことしか言わないなら選びようも無いだろ、…

2018/11/04:昼前

部屋の窓から顔を出して、煙草を吸う。視界にはカメムシが8匹。向かいのベランダの白シャツに3匹とベランダのフチに2匹と飛んでるのが2匹と窓の内側のレースカーテンに1匹。クソ田舎だから人間は少なくて、カメムシは多い。 煙草の匂いが指と口の中にこ…

回想

彼の故郷は小さな集落である。水田や畑が民家と同じ数ほど並ぶその集落には、1年中、土の匂いが漂っている。集落の中には1本の川が流れている。彼の家はその川沿いの崖の上に建っていて、彼は常に水が岩にぶつかったり渦を巻いたり忙しく流れ続ける音を聞き…

2018/10/29:酔

人間は猿と変わらない。猿よりも馬鹿な生き物かもしれない。人間はどんな動物よりも賢いと思っているのは人間だけで、そんなことに固執しているのは人間だけで、他の動物は人間の存在なんて風景と同じに思っているのだろう。 自意識の中でしか生きられない悲…

2018/10/27

夕方、窓辺で煙草をふかしながらぼーっと空を眺めていると一羽のツバメが視界を通り過ぎて行った。こんな時期にまだツバメがいるなんて、と不思議に思う。他のツバメと一緒に渡りそびれたのかもしれない。もしそうならば、早くみんなに追いつけるようにと願…

ひとり、美しさに打ちひしがれる夜。酒を飲んで、ふわりとした頭で、考えているふりをして何も考えずにいる。 自分に無いものを持っている人がどうしようもなく羨ましくて妬ましい。美しいと思うものはいつも、自分の中にはなくて、美しいのはいつも他人だ。…